インターネットの利便性が逆に大きなリスクとなることも
テレビの普及は依然として確固たる地位を確立しているが、最近めざましく普及しているのがインターネットである。インターネット利用者は増え続け、さらにソーシャルメディアの発展により「誰でも簡単に自分の意見を発信」することが日常化した。同時に利用者同士の情報交換が活発になることで、議論は新たな議論を呼び、デマ情報に踊らされる状況も散見される。意図的に誘導するものばかりではなく、誤った事実認識に基づくものや誤解による意見などが混在することで、ネット世界で混乱をきたすこともある。
さらに、誰でも閲覧可能であることから、風評がどこで発生し、何がきっかけになるかが不確実であると同時に、情報拡散のスピードが早く、止めることができないところにインターネット情報の特性がある。厄介なことは前述のとおり、事実が曲げられて伝えられたり、そのデマが事実化することがある上、そのコメントの内容や記事・添付物がネット上に残り、その後も何度も蒸し返されてホットイシューになる可能性があることが、テレビ報道とは異なる点である。以下は、平成23年度版情報通信白書に掲載された調査結果であるが、若い世代を中心にインターネットの躍進ぶりが確認できる。
(年代別テレビ、インターネットの情報源としての重要性)
(趣味・娯楽としての重要性)
同白書によれば、インターネットの利用者は、平成17(2005)年で8529万人であったが、平成22(2010)年には9462万人に増加し、かつ毎年増え続けているとの検証報告がある。また、インターネット情報は、新聞、テレビ、雑誌、ラジオの4メディアの情報はもちろん、独自のニュース媒体、掲示板、ブログ、コミュニティ、SNS、Wiki、個人HPや動画共有など、あらゆるマイクロメディアが存在することで、情報の氾濫が生じている。
また、平成24年の同白書では、テレビや新聞・雑誌と他のメディアとの重要性認識を比較検証しているが、10代~20代の若い世代で「話題となる情報」についてインターネット情報の重要性を認識し、その情報は「新聞・雑誌媒体」を抜き、「テレビ媒体」に急迫する勢いを見せている。
(情報メディアの重要性認識)
ネット上の拡散スピードでは「ツイッター」と「2ちゃんねる」が監視対象
インターネット情報を監視・分析するホットリンクによると、インターネットにおけるあらゆる情報素材の中でも、危機的状況の要因をつくるものは「ツイッター」と「2ちゃんねる」だという。1時間の間に100以上の情報が連ねられ、一気にホットイシューに展開することもあるため、同社では30分ごとにキーワードをもとにサイト内を直接検索して風評の拡散を監視するサービスを提供しているという。
一般的な危機管理広報では、「ツイッター」や「2ちゃんねる」は、噂・憶測によるコメントや事実に基づかない意見などとして、無視することが通例の対応であったが、情報拡散の早さやデマの事実化、抗弁しない者は受け入れたのも同じ、との誤解を生じる事態も発生しており、名指しされた個人や企業はそうしたデマ情報に対して単純に素通りできない状況も出てきた。そうした事態に備えるために、できるだけ早く危機的状況を招く要因情報を認知すること、見逃しや見落としを抑えること、大量の情報から効率よく要因情報の危機的レベルを区分し、情報の拡散可能性や誤った事実認識への防止に役立てることが重要だ。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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