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コラム

CSR視点で広報を考える

被害が未知数な液状化現象に再び注目

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東京都で液状化現象の被害マップを開示しているのは足立区、江戸川区、狛江市だけ

東日本大震災から1年半以上が経過し、個々の国民は新たな巨大地震についての危機意識が薄れつつあるように見える。しかし、一方で国や自治体ではそれぞれ、東日本大震災の教訓を生かし、対策を着実に進めている。

【東日本大震災】国家存亡の危機180秒 映像!地震津波の瞬間・原発事故!とタイトルされたYouTubeの映像を見ると、あらためて東日本大震災発生時の危機感がわき起る。しかし、今日話題にするのは、震度7という揺れの強さや津波、火災旋風、ましてや原発事故による影響でもない。実はあまり目立った話題とならなかったが、東日本大震災で過去最高の被害をもたらした液状化現象である。

東日本大震災では東日本の広範囲で液状化現象が観測されている。大きく報道された千葉県浦安市では、中町・新町地区を中心に市面積の約85%が液状化する大きな影響を受けたのをはじめ、関東地方全体で少なくとも、東京都、千葉県、神奈川県、茨城県など、7都県96の地域で液状化現象が確認された(表参照)。この調査結果については、平成23年8月に国土交通省関東地方整備局と公益社団法人地盤工学会が「東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明」報告書で詳細に説明している。また、本報告書に加え、個々の調査票等は、国土交通省関東整備局のホームページに掲載されているので参考とされたい。

今回、液状化を話題とした理由の一つは、その被害の影響が、湾岸周辺にとどまらず、河川周辺や旧河道、湖沼の埋立地等の内陸部にも及び、隣接する住宅、道路、河川堤防、港湾施設、ライフライン、工場等に影響を与えたことによる。液状化現象の影響が出た地盤では、噴砂、亀裂、開口、崩壊・崩落、地盤沈下・傾斜などの地盤の変形が認められた。また、液状化発生面積が大きい場合、被害の程度も大きくなる相関関係があることがわかっている。

こうした広範囲な被害が想定される液状化現象について、各自治体は個別に対応を急いでいる。国土交通省ハザードマップポータルサイトにおいても、「地盤被害(液状化)マップ」が記載され、各自治体の対策の進捗状況が確認できるようになっているが、東京都で液状化現象に対する被害マップを現時点で公表しているのは足立区、江戸川区、狛江市だけであり、対策の遅れは否定できない。

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予想を超える液状化現象の被害

東日本大震災では、地中のマンホールが大人の背丈ほどに飛び出し、住宅街では地盤がたるみ傾く家が続出した。車は50cmほどの泥に埋まり、林立するマンションは周囲の地面が沈み、地中の排水管がむき出しの状態となっていた。特に大きな被害となったのは下水道である。完全に破壊され、多くの世帯で使用不能に陥った。内陸部では道路が大きく波打ち、電柱が傾き、電線が垂れ下がり、危険な状態が確認されている。重心の高い建物や重心が極度に偏心した建物ではより、顕著に不等沈下が生じ、中高層建物では転倒・倒壊に至る場合があるので被害は計り知れない。内陸部での液状化現象は力のベクトルが異方向から複雑に重なるため、どのような影響となるか予測がつきにくい。巨大地震の各種の被害想定に基づく対策は着実に進みつつあるが、液状化現象に対する対策はやっと始まったばかりだ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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