コラム

CSR視点で広報を考える

テレビ報道から見る瞬発的危機事態への推移

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依然として媒体ナンバーワンの影響力を持つテレビ報道

2ちゃんねる、ブログ、フェイスブックなど情報発信の媒体は数多く存在するが、依然として最も影響力を持つのは、テレビ報道だ。他の媒体は、特定の素材を攻撃するために悪用されたり、一方で表に出された誤情報を修正するために企業側が利用することもあるが、テレビではその影響力から公正さと事実の追求が最優先されるため、信用力があり、伝播のスピードも早い。

かつての事件を比較してみる。2007年夏から秋にかけて発生した食品偽装事件。今も記憶に残る「石屋製菓(白い恋人)」「赤福」「船場吉兆」の3社の老舗企業で事件は発生した。テレビ情報の調査・分析ツールを提供する株式会社VLeによれば、3つの事件の報道後の展開は以下の表のように大きく分かれている。

3つの事件の発覚初日の報道時間は、石屋製菓、赤福、船場吉兆の順に多かったが、対応の悪さや新しい問題の発覚で、その後の報道露出の時間は逆転し、船場吉兆、赤福、石屋製菓の順番となった。新たなコンプライアンス教育の導入や再発防止策の徹底などで、石屋製菓、赤福、船場吉兆を除く他の吉兆グループ(船場吉兆は廃業)は再生したが、テレビ報道の影響を大きく受けた特徴的な事例である。

一方、昨年の11月8日に報道されたオリンパスによる「巨額損失隠し・粉飾決算事件」では、事件発覚初日の報道時間は約83分(24件)、翌日までの報道時間は一気に過熱し約302分(106件)となり、その後一度沈静化しかけたが、2012年2月16日の「旧経営陣らの取り調べ」で再び単日で約72分(53件)の報道がなされ、マイナス報道が継続した。

最近の事例で、今年10月11日に発覚した森口尚史氏の「iPS細胞世界初心筋移植虚偽騒動」では、発覚初日の報道時間は約43分(14件)であったが、翌日までの報道時間は、こちらも一気に過熱し約313分(63件)と拡散した。森口氏の騒動は、その後も沈静化することなく10月21日までの11日間で約14時間22分(306件)の報道が集中し、文字通り「話題の人物」となった。

1日あたりの最大報道件数の視点で見ると、前述の食品偽装事件3社の事例では、石屋製菓が約100件、赤福が約150件、船場吉兆が約180件となっており、特に船場吉兆事件報道が継続化した理由として、約120件、約140件、約180件の報道の山を何度も作ってしまったことが大きいと思われる。

報道過熱の確証とその後の対応の重要性

不祥事が発覚した場合、初日の報道時間が60分前後、翌日には数時間の報道が確認された時点で、報道過熱の状況にあると考えられる。一方で単日の最大報道件数が100件を超えても同様の解釈ができる。どちらも会社は危機的事態に追い込まれ、その後1カ月から数カ月にわたり、報道のターゲットとして常にモニタリングされる。

不祥事の発覚自体を抑え込もうとすれば、隠蔽のレッテルを貼られ、事態はさらに深刻化することは言うまでもない。その意味で、最初の発覚の段階で危機的事態を「無」にすることはできないから、その後の対策で危機的事態の拡大防止を行うことが最優先事項となる。石屋製菓の事例ではそれが功を奏した一例でもある。最初の発覚での報道過熱は折り込み済みだが、その後は大きな報道の山を作らずに済んだ。

一方、赤福と船場吉兆の事例では初日発覚後10日から20日にかけて新たな隠蔽事実などが発覚し、2番目の報道の山を作ったことで、マスコミの関心がさらにエスカレーションした経緯がある。一般的に発覚後2週間目から3週間目の間は、事件沈静化の見極め時期と言われていて、企業側が最も慎重かつ漏れのない対応を行わなければならない最重要期間であることを忘れてはならない。

こうした背景を考慮すると、特に最初の記者会見やプレスリリースが非常に重要であり、できるだけ知りうる事実を正確に伝えることの他に、積極的に自ら開示を行う姿勢を見せること、さらに原因究明や思い切った是正策や再発防止策は、事件発覚後できる限り早期(可能であれば72時間以内)に発表することで好感されて事態の収束も早まるものと考えられる。さらに重要なことは、2度目、3度目の報道の山を絶対に作らないことである。そのためには報道の露出に注意喚起し、情勢の変化に機敏に対応していくことが不可欠だ。
 

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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