コラム

CSR視点で広報を考える

日本版クラスアクションは日本の市場をどのように変えるのか!?

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大規模量販店や結婚紹介所などが悲鳴をあげるこの制度とは?

日本版クラスアクション(集団訴訟)の導入は、平成19年6月7日に「消費者団体訴訟制度導入」が決定されたことでスタートし、今年8月に消費者庁より「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案」として発表された。

集団訴訟とは、一般的に、公害訴訟、薬害訴訟、欠陥商品事故訴訟、証券投資被害訴訟など、同一の事件について利害を共通にする複数の人が原告側となって、同じ被告を相手取って起こした民事訴訟のことで、同じ原因によって被害を被った多数の消費者が、加害者である事業者に対して損害賠償を求める場合などに利用される。

現在の日本の集合訴訟の類型のひとつは共同訴訟(民訴法38条)で、権利義務が共同であるとき又は同一の事実上及び法律の原因に基づくとき、又は権利義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときに、各消費者が原告(共同訴訟人)として提訴することができる制度で、判決の効力は当該原告のみに及び他の同一・同種の原因による被害者は救済されない。

もうひとつの類型としては、選定当事者制度(民訴法30条)で、共同の利益を有する多数の人が、自分達の利益代表を選んで、代表者(選定当事者)が当事者として訴訟追行をする制度であり、判決の効力は、この原告(選定当事者)と選定者にのみ及ぶものである。この制度においても参加しない他の消費者被害者は救済されない。

今回想定されている新しい日本版クラスアクションは、2段階の訴訟手続を取ることが予定されている。1段目の手続(共通義務確認の訴え)は、特定適格消費者団体が原告となり、個々の消費者からの授権を受けずに訴えを起こし、追行する。2段目の手続のうち、簡易確定手続も、特定適格消費者団体が原告になり、授権をして参加(オプト・イン)した消費者のためだけに手続を行う。2段目の手続のうち、異義後の訴訟は、特定適格消費者団体が原告になる場合と、個々の消費者が原告になる場合が想定されている。

日本版クラスアクションでは米国クラスアクションと異なり、対象となる事案が限定的である。以下は、消費者庁から発表された内容を転記したものであるので参照されたい。

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1段目の共通義務確認の訴えについては、被告事業者が、相当多数の消費者に共通する事実上及び法律上の原因に基づき事業者が負う金銭支払義務が対象となり、物品、権利、役務その他の消費者契約の「目的」となるものについて生じた損害で、役務が契約の目的であった場合は、さらに、役務の対象となった財産について生じた損害及び代替役務の提供を受けるための費用に関する損害に限定される。また、消費者契約の目的となるものの対価に関する損害も対象となる。

今回の制度では、拡大損害として、商品や役務が通常有すべき安全性を欠いていたことにより、人の身体・生命が損なわれたり、当該商品以外の財産が毀損するなどの損害は除外される。また、「財産」以外を対象とする役務(旅客運輸、遊園地、医療、美容整形など)の消費者契約に関する損害賠償は除外される。

さらに、物品の販売を目的として個人情報を収集した事業者の個人情報流出事案は対象外であるが、人材派遣、結婚紹介所、職業紹介所などが行う個人情報の保管・管理自体が目的の消費者契約の個人情報流出事案は対象となる可能性がある。その他、有価証券報告書虚偽記載事案や虚偽の広告・表示を行った卸売り業者への損害賠償請求、製品事故による人の怪我や家屋への類焼についての損害賠償請求は対象とはならない。

仮に、ある家電メーカーで、製品に致命的な欠陥があり、複数の大規模量販店でこれらの製品を消費者に販売した結果、不具合により当該制度を利用して複数の大規模量販店を被告として集団訴訟が提起されることが想定される。この場合の原告は個々の大規模量販店のみであり、そもそも致命的な欠陥商品を製造した家電メーカーは被告とならない。しかし、大規模量販店が敗訴すれば、結果として家電メーカーに求償することになることは容易に想定されるため、家電メーカーも当該集団訴訟に補助参加を求めたいところであるが、現行の案には補助参加の制度自体の記載が含まれていない。また、当該商品の欠陥が原因で人が怪我をした場合は、当該集団訴訟とは別に個別に被害者が家電メーカーや大規模量販店に対して損害賠償を行うことになる。

今回の制度は、自動車事故の被害者など、個々の対応や状況によって過失相殺などの個人差が生じる場合などの事例も対象となっていない。本制度の理解にはまだ相当の時間がかかるものと思われるが、1段目の集団訴訟は授権を受けずに訴えを起こすことができるだけに、事業者側から見た場合、脅威となる可能性は高い。消費者の個別事情が多様である場合には、共通争点の「支配性」が欠けていることを主張立証することも集団訴訟の法的対策の一部であるが、個別の訴訟を免れるわけではない。

むしろ普段からのコンプライアンス体制を強化し、不当条項、不当契約、不当表示、不当勧誘など消費者との接点となる契約・業態の見直しを徹底し、リスクの予防・是正を今の段階から実施することが望ましい。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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