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コラム

あの商品、このサービスがヒットするワケ

「羽化」を狙うパイロットの万年筆「コクーン」

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PILOT(パイロット)が20代から30代の男性をターゲットに発売した、万年筆「cocoon(コクーン)」の、売れ行きが好調だという。3150円という入門価格が魅力だが、その質感は1万円以上の万年筆にも引けを取らない。

「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(安かろう、悪かろう)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(市場相場的価値)」「高くて価値の高いもの」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。当然、バリューラインを下回る、例えば「中間的な価格で価値が低い」ようなものは、市場から撤退を余儀なくされる。バリューラインを上回るものは、消費者の支持が得られることになる。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在になる。「コクーン」はこの「スーパーバリュー」のポジションを狙った価格設定であることがわかる。

スーパーバリューのポジションを実現するためには、多くの販売数量実現し、規模の経済で製品原価を低減したとしても利益率は低くなり長続きさせることが難しくなるのが通常だ。では、「コクーン」はどのようにして利益を出すのか。そのポイントは2つある。

1つは、「アフターマーケティング」。本体の価格を安く設定し、専用のインクカートリッジの販売で稼ぐ。パソコンのプリンターと同じビジネスモデルだ。

もう1つは、「アップセリング」。商品の買増し・買換えで稼ぐ。「コクーン」の真の狙いはここにあるといえる。入門商品でその世界に誘い、初心者を本格ユーザーへと「羽化」させることを狙ったネーミングでもあるのだろう。「コクーン」とは、「繭」という意味なのだ。万年筆の世界は奥が深い。ユーザーがその世界に羽ばたいたとき、この商品を世に出したパイロットは真の成功を確信するはずだ。

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