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日仏の放射能市民団体が共同で日本の避難基準に異議訴え

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2012年12月5日、放射線影響に関するフランスのNGO、クリラッド(CRIIRAD)と、日本のNPO、市民放射能測定所(CRMS)は共同で『福島第一原発事故の影響』を発表した。その趣旨は「日本では今も何十万もの人々が、リスク許容量を超えるレベルの外部被ばくにさらされている」という副題が訴える通り。昨年6月23、24日に猪苗代で行われた『市民科学者国際会議』の直後に、CRIIRADとCRMSが共同で行った詳細な調査をもとにしている。

 ※詳細はこちらからダウンロードできる。

今回の発表の概要は次の通り。

CRIIRADとCRMSは、渡利地区(福島市)と小国地区(伊達市、当時)を中心に外部線量測定を行った(渡利地区では避難や除染計画が遅々として進まず、小国地区では、避難勧奨地点に指定された世帯を抱えている)。調査では、これら地区において、室内外における被ばく量の変化を推計し、日本政府が採用している室内における減衰率や、室内/屋外での曝露時間の推計が適当なものであるかどうかの検証を行った。また、除染作業が終わったとされる家屋の室内外での測定を行い、十分な効果が得られているとは言えない状況の確認が述べられている。

現在、日本政府が採用している年間1mSvの空間線量率は0.23μSv/hである。その値は、屋外・屋内滞在時間と家屋の素材とその減衰率を一律としている。しかし、屋外で長時間作業に従事する者や、家屋の素材、家屋周辺環境の違い等々からくる変化を反映しておらず、個人被ばく線量(外部被ばくのみ)を推計する上で適当な値ではないことがわかった。

さらに、CRIIRADとCRMSは、2012年6月21日に国会を通過した「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく被災者保護を訴え、基本方針策定の遅れを批判している。加えて、対象地域に関しては、内部・外部被ばくを合わせた累積線量で、年間1mSvまたはそれ以下にすることを要求している。

小国地区(伊達市)は、12月14日をもって128世帯が避難勧奨地点解除となった。国内外の研究者、医師、市民団体等が20mSv/yという現在の避難基準を問題視している。

これを受けて、CRMS市民放射能測定所ネットワークの理事、岩田渉氏は、2012年12月21日、こうした「暴挙」により、「福島県、および広範囲に放射能汚染された地域、日本国内の人権状況は、悪化の一途を辿りつつある」として、再び声明を発信した。

CRMSでは、食品及び農作物等の測定、WBC(ホールボディーカウンタ)の測定を受付け、「こどもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」による「こども健康相談会」などを実施して被災者の支援を続けている。

東京電力は年末29日に、「福島復興本社」を福島県楢葉町の運動施設「Jヴィレッジ」内に置くと発表した。福島復興本社では、福島第1原子力発電所事故に伴う賠償や除染など復興関連業務を統括する。代表に就く石崎芳行副社長は、福島市内で記者会見し「福島に根を下ろして全力を尽くす」と述べた。東電は今後、会長や社長、福島復興本社代表などで構成する「福島復興本社会議」を3カ月に1回程度開き、復興に関する重要事項を現地で議論するほか、復興関連業務に現地で携わる社員を約500人増員し、4000人体制とする計画を発表している。

原発事故への対応は、2013年も予断を許さない状況が続く。国による被災者支援体制の不備に関しては、今後もメディアや市民団体等による働きかけが必要だ。

※クリラッドは正式名を「放射能に関する情報および独立調査のための委員会(Commission de Recherche et d’Information Indépendantes sur la Radioactivité)という。

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