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NHKが目を付けた「縮む赤プリ」 ビル解体の報道が相次いだ理由

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高層ビルの解体工事がニュースに!?

akapri

内側から解体するため、“縮む”ように見えると話題。 ビルの高さは、工事前(左)に比べると、約30メートル低くなった。

1月9日、新聞各社が一斉に写真付きで報じた旧グランドプリンスホテル赤坂、通称“赤プリ”の解体の現場。その裏側には、事業者である西武プロパティーズと工事受託者である大成建設の広報連携があった。

発端は、2012年11月、国土交通省記者クラブに詰めるNHK記者から入った1本の問い合わせ電話。「赤プリ、下がるらしいですね?」。解体工事には、大成建設が開発した超高層ビル向け新解体工法「テコレップシステム」が使われる。屋根をつけたまま、徐々に建物の内側からビルを解体するという工法の噂を聞きつけてのことだった。外観を定点撮影する許可を出し、大成建設が用意した解体現場の映像を提供すると、同月13日夕方から夜にかけて「首都圏ネットワーク」「ニュース7」「ニュースウォッチ9」で放映。翌日からは、テレビ東京を除く在京キー局からの取材が殺到し、計6番組に紹介された。

西武プロパティーズ広報担当の安武十吾氏は、「取材を受けるにあたって意識したのは、ただの解体現場を紹介する内容にならないこと」と話す。「広報として協力する以上、跡地計画を含めてプリンスホテルというブランドをPRする場にしようと考えました」。粉塵や騒音が発生しやすい高層ビルの解体だが、周辺環境への配慮からこの工法を選んだ。そのような事業者としての思いも記者に伝えるよう努力した。

現場公開で再びメディア露出

解体現場

1月8日、報道陣に初公開された解体現場には、テレビを含む30媒体60人が集まった。

テレビ取材が落ち着くと、建築関係の業界紙誌から取材の依頼が相次いだが、年末の繁忙期に入りすべてに協力できる状況ではなかった。一方の大成建設にとっては、工法をPRする絶好の機会。両者の間で、報道陣に解体現場を公開できないかという話が出たのはその頃だ。「もちろん、大成建設さんにとってチャンスであることは察していました。私たちにとっても新事業計画を訴求でき、互いにメリットがあると合意に至りました」。自社保有のメディアリストや記者クラブを通じ、解体工事の現場を公開する旨のリリースを打ち、迎えた公開当日の1月8日。現場にはテレビ、一般紙・業界紙など30媒体60人が集まった。

民放キー局はそれまでにひと通り取材を受けていたため、テレビ取材が入ることはあまり期待していなかった、と安武氏は明かす。「放送を見て、なるほどと思ったのが、皆さんが『本日、解体現場を報道陣に初公開』とレポートされたことです」。提供された映像ではなく、自社のカメラの前にレポーターが立ち、ニュースを伝える現場報道がメディアにとっては重要だったのだろう。結果、テレビでは16番組で紹介されるなど、「広報として大成功」を収めた。

実際に報道された内容から察すると、今回の案件には「3つのニュースバリューがあった」と安武氏は分析する。1つ目は、スポーツ、芸能、政治などさまざまなニュースシーンの舞台になった赤プリというブランド価値。2つ目は、140メートルの超高層ビル解体は国内では初の規模であること。3つ目は、気づかないうちに“縮む”画期的な工法。「これらの切り口があったためにメディアを引き付けられたと思います」。

新施設の開業は16年夏。今回の成功から学んだことを糧に、新しい企画も検討中だという。