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コラム

33歳、現場プロデューサーが考えるエージェンシーの未来

エンゲージメントは「広告」ではなく「コミュニケーション」で生まれる。―「ニコニコ動画」さんとの対談(3/3)

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検索連動広告は広告商品としてはエポックメイキングだと思っていて、検索という極めて根源的なネットを使う欲求に対して広告を入れる、あの仕組みはそれまでに全くないものができたし、商品の売り方も変わった。すごい理にかなっているし、そこにテクノロジーを使って、皆が求めるものを作っている。

ただ、検索連動広告を売るのと同じ考え方でコンテンツ的な広告を売るのはどうかと思っているだけの話です。

梅田:そこで思考停止するのはやめましょう、ということですね。

岡村:「ネットユーザー」と言うと、特殊に思ってしまい(思考停止してしまい)がちですよね。でも、現実的にネットユーザーじゃない人なんてほとんどいない。でも「ネットユーザー」と言い換えた時に、=「何か文句を言う人たち」と思ってしまう。

梅田:受動メディアとの対比として、そういう言葉が出ていると思いますが、今くらいの状況だとそういう区別をする必要もなくなってきている。世界的なマーケティングの潮流ではデジタルマーケティング部門がなくなっていて、マーケティング部門の中に再び収まっている。「普通にデジタル使うでしょ」ということで。

岡村:ネットは否定的な意見が多いからいやだ、と言う人もいますが、昔からその人の耳に届いていないだけで現実にはあふれています。広告でなくても企業には毎日お客様の声が直接届いています。インターネットやソーシャルメディアの普及によって、よりユーザーの声が届きやすくなりました。そのことで自分の担当している案件の否定的な意見は見たくないと思う広告代理店の方が多くいますが、そこで思考を止めるのではなくいろんな声を聞くことも重要です。

梅田:クライアントは当たり前ですが自分の商品を本当によく見ている。いわゆる傾聴。

岡村:僕らもそれ(傾聴)を意識しています。せっかくクライアントさんもお金をかけて広告を出しているので、「なんだ、邪魔な広告か」と思われるものではなく、ユーザーと一緒に楽しめるような広告をしていきたいです。

梅田:今日の対談では、1つ大きなテーマが見えたと思います。本当にありがとうございました。

対談を終えて

今回の対談は、「メディアとエージェンシーという立場でディスカッションすることで、クライアントへの提供価値や、それのプロデュースについて模索する」という目的で実施したのですが、その意味で、ドワンゴさんにご協力いただけたのはとても大きかったと思います。なぜならクライアントのマーケティングは、エンドユーザーである消費者/生活者のために実行される活動ですが、(ユーザーを見ていないメディアはないと思いますが)際立ってそのユーザーを見ていて、大切にしているのがニコニコ動画であり、ドワンゴさん発展の歴史だからです。

今回、対談の冒頭で「キーワードはユーザー」と発言しましたが、(その発言した瞬間は)それは(いつもユーザー目線に立っている)ニコニコ動画だから、という意識もあったのですが、対談を終えて原稿をまとめてみると、その発言は思いのほかに普遍的なものになった感があります。

小見出しを抜き出してみても、

  • 全体のキーワードは「ユーザー」。
  • ストーリーとバッファ。ユーザーにゆだねる。
  • コミュニケーションをし、企業とユーザーの距離を縮める。
  • ユーザーに背を向ける広告代理店。
  • ツールには広告を。メディアには広告的コンテンツを。
  • ユーザーのエージェントへ。
  • ユーザーを知り、企業の文脈を知り、ビジネスを拡げていく。

・・・と、(特定のメディアやクライアントに限らず)マーケティングコミュニケーション自体を再度考え直すヒントになりそうなテーマが抽出できたと思います。中でも、「コミュニケーションをし、企業とユーザーの距離を縮める」については、エンゲージメントと言われている中、それを生み出すのは「広告」ではなく「コミュニケーション」でしかないのだと、改めて強く認識しました。

また、プロデューサーという視点に立つと、メディア、そしてクライアントと目線を合わせるのがプロデュースには不可欠なのですが、その大前提として「(メディアやクライアントといった)相手を見るのではなく、ユーザーを見て、同じ方を向く」というのが如何に大切なことか、と感じました。(テーブルで向き合うより、カウンターで並んで座る方が親密である(あるいは親密になれる)のと同じですよね)。

また、「ビジネスのプロデュース」という大きな課題についても、「企業の文脈が大切で、その源流はやはりユーザーにある」ということは、今後とても参考になる視点だと思いました。

ドワンゴの岡村裕之さん、そしてバックアップしていただいた広報の高橋江梨子さん、本当にありがとうございました。


【梅田 亮「33歳、現場プロデューサーが考えるエージェンシーの未来」バックナンバー】