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コラム

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世界的ブームを起こす秘訣!?ソーシャル先行型コンテンツの広がり方

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「マカンコウサッポウ!!!!!」

Twitterに発せられた日本の女子高生のツイートが世界的なブームの発端になると誰が思っていただろうか?

アニメ「ドラゴンボール」の必殺技をかけているかのようなこうした画像が口コミで広まり、それを見たユーザーにより多数投稿され、これが日本のマスコミやインフルエンサーによって国内外に拡散されて海外でも形を変えてブームになっている。このブームに乗り米カプコンではゲームタイトル「ストリートファイター」の波動拳の写真を募るコンテストを開催するなど社会現象化している。英語ではこのような写真を称して“Hadoukening”(波動拳ing)スターウォーズのダースベイダーが相手を道の力で操る“Vadering”(ベーダーing)といった言葉も出てきているようである。

偶然発生したように見えるこの事象に、実は現在のブームの発生メカニズムがいくつも隠されているのではないだろうか。今回は筆者のこれまでの経験や今までに世の中で行った事象と照らし合わせて現代のヒットの法則を解き明かすヒントを探ってみたいと思う。皆様がキャンペーンを設計するときの参考になれば幸いである。

前提はWeb、ソーシャルの普及

言うまでもないが、今回のブームはTwitterという世界的に普及しているプラットフォームを介したものであり、そのようなプラットフォームが存在することが前提である。しかし、発端は特定のメディアであっても実際に広がるときはFacebookやYouTube、LINEなどといったバイラルプラットフォームがあまねく活用されていることも注目したい。ユーザーはあくまでもソーシャルを活用しておりプラットフォームには依存していないということである。

インパクト性と程よいギャップ

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ソーシャルで広まるためにはまずはインパクトが必要であり、今回の写真はそれなりのインパクトがあるものになっているのではなかろうか。そのインパクトをさらに強めるのが程よい“ギャップ”である。今回は普段空中浮遊や魔法や拳法の必殺技などとほど遠い女子高生が行っているというギャップが広がりを早めたのではないだろうか?

誰でもできるハードルの低さ

今までの拡散のブームは例えばどちらかというと「超人的」な絶対に出来ないことや「スクープ」的な珍しいことが主であったといえる。ソーシャル黎明期のブームを思い起こしてみるとスポーツでは超ファインプレーや一般には偶然投げたものがゴミ箱に収まるなどの動画が流行った記憶がある。あるいは企業の広告ではタイガーウッズがトリック撮影を使って例えば水上からショットをするなど、いずれにせよ日常ではありえない状況を拡散していたのである。

しかし、今回は魔法や必殺技という非日常的な側面はあるものの、女子高生が教室で飛び上がって撮影したことはある意味明らかであり、「私にもできる」という気持ちがより拡散を進めたと思われる。筆者はこのことをソーシャルメディア特有の「自分ごと化」が上手くいった事例ではないかと思っている。また、「日本の女子高生が教室で行っている」というのも、ハードルを下げる要素になっているのではなかろうか。例えばもしこの写真が断崖絶壁の崖の上で筋骨隆々の男性が鬼の形相で信じられない高さまで飛び上がっているものであったら「他人事」になってしまいここまで拡散しなかっただろう。「女子高生」といういわば“普通”の人が「教室」という“日常”のシチュエーションで行ったことが普及の要因になっているという新しい見方ができるのではなかろうか。

特定の層に深く刺さるコンテンツ

今回モチーフにされているアニメーションやゲームはある程度広く認知されているものの、非常にコアなファンも多く、そのタイトルに関しては特定層が必ず話題にするということも確かである。筆者はソーシャルでは前章でも書いた通り「自分ごと化」が重要であると思っているのであるが、日本の女子高生の「マカンコウサッポウ」が国境を越えるときに「波動拳」や「ダースベイダー」になっているのはその国に合わせて“より深く”そのコンテンツを理解できる人たちが“自分ごと化”するためであろうと考えている。

マスコミに取り上げられるなど、話題が話題を呼ぶコンテンツ

もう一つ重要な要素は“話題が話題を呼ぶ”ということである。今回のケースは日本の女子高生の間で“マカンコウサッポウ”が流行っているという話題をマスコミなどが取り上げて、さらに話題を呼びそれに海外でも形を変えて普及している、米カプコンがコンテストを開催するなど色々な話題が次々と浮上してくるのである。ソーシャルで火をつけるためにはやはりマスメディアにまでいかに波及させるかということが重要なのではないだろうか。

ソーシャル先行型は今までのブームとどう違うか

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上記のようにいろいろ書いてきたが、では今までのブームと“ソーシャル先行型”はどう違うのかいくつかの事例で考えてみたい。昨年よりブレイクして現在世界ツアーを実施中のきゃりーぱみゅぱみゅはYouTubeのビデオが海外でアクセスされることにより火が付き、日本より先にLAでライブを行うなど海外での活躍がマスコミに紹介される形で始まり、日本での活動以外でもフランス・パリのジャパンエキスポや今回の世界ツアーと活躍の場を広げており世界に日本の文化を広げる活躍をしている。

きゃりーは見た目もインパクトがあり、ファッションとおとなしい性格の程よいギャップがありポップでありながらなんとなく出来そうなハードルを下げてファンション性も一般というよりは特定の人に深く刺さる形で海外の活躍の話題が話題を呼ぶというサイクルでブームが助成されてきたのでないか。韓国より世界に流行した江南スタイルのPSY(サイ)はあまりモテそうもないおじさん(失礼!)がお金持ち風ながらシャープな動きをする衝撃的なパフォーマンスで美女を引き連れるというギャップを演出し、それがYouTube上で話題となったことでマスコミが報道し、世界中に伝播していったのである。こちらも普通のどこにでもいそうな人がパフォーマンスをすることでハードルを下げ非日常的な世界の中でもどこか自分でもできそう、なれそうという世界観を演出しているのであろう。

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ももオフィシャルブログ

ごく最近では旅行番組“あいのり”で有名になった人気ブロガーのももさんが「半顔メイク女子」というブログを公開したところそれがたちまちその日のうちに話題となり、翌日のワイドショーに取り上げられるといったスピード展開をするような事例が出てきている。

今までこれほどソーシャルを活用して認知を世界的に広げることができる時代があったであろうか。企業のマーケティングも上手くこのような文脈に乗せて展開することでかつてない規模とスピードで展開することが可能だ。ただし、このような施策だけでは確実に消費者に認知を担保することが保障されないであろう。いくら構成要素を準備していてもタイミングを含む偶然の要素が残るからである。そのためにはやはりペイドメディアと組み合わせたプランの中で広がる要素を織り込むというのが堅実といえるのではないか。いずれにせよ、選択肢が広がることは逆にマーケターの腕の見せ所である、その意味ではこれからはキャンペーンの成功と失敗の差が如実に表れるようになるのではないか。そしてその差はソーシャル上の拡散力ということになってくるのではないだろうかと考えている。

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