PENTAWARDS 国際審査委員長 ジェラール・キャロン氏
サントリー食品インターナショナル ブランド戦略部 シニアスペシャリスト 加藤芳夫氏
これらさまざまなパッケージを毎年すべて見ているのが、ペントアワード創設以来、審査委員長を務めるジェラール・キャロン氏だ。ここではキャロン氏と、同賞の審査員を3年間務め、日本人として初めてペントアワード殿堂入りを果たしたサントリー加藤芳夫さんと共に、これからのパッケージデザインには何が求められているのかを考えていく。
アイデンティティのあるデザイン
キャロン ペントアワードでは毎年、次のように審査を行っています。まず全世界から集まった作品(画像)を、世界各国10カ国以上から選ばれた審査員団(12名)に審査してもらいます。その審査結果により、ノミネートに挙がってきたものは本部に現物を送っていただきます。ダイアモンド(最高賞)やプラチナなどの各賞は集計ポイント数が基準になりますが、私が実際に現物を見て、集計結果と照らし合わせながら最終的な判断をしています。そのプロセスにおいて毎年、いくつかのトレンドが見えてきます。
――2012年度の審査では、どのようなトレンドが見られましたか。
キャロン 審査の際に、私はファイルを用意し、そこに同じような傾向のものをまとめていくのですが、その中からいくつか挙げてみます。
- ロゴ、色など、一つのアイデアを強調したデザイン
ダイアモンドを受賞したダイエットコークのパッケージ(1)がまさにその代表。ロゴや色などの一部を強調することで、見た瞬間に目に留まるものにする。ただしこれはある程度認知が高いブランドだからこそ可能なデザインともいえます。(5) - 従来であれば写真を使うところにイラストを使用
- 従来のスタンダードなパッケージにプラスして新しい形をつくる(3)、(11)
- 新聞の記事風デザイン(7)
- 生産者や商品の背景を伝えるべく、顔やストーリーをイラストで描く(9)
- エコパッケージでありながら、美しいデザイン(8)
このようにいくつかのトレンドは見られるのですが、一つ言えることは消費者に驚きを与えられるようなパッケージでなくては、もはや手にしてもらえなくなっている、ということです。美しい写真を使い、丁寧に作ったタイポグラフィーで商品名を書いて、「おいしい」というキャッチフレーズを入れた美しいデザインだとしても、それだけで消費者が飛びつく市場ではなくなっているのです。
自明のことですが、いま世界中どこにいっても食品、化粧品、衣料など、どのマーケットも成熟しきっています。企業もよりよい商品を市場に送り出すための高度な技術やノウハウを持ち、次々と新しい商品を送り出してきます。そして、インターネットによって世界中の情報が流通している昨今、いまや地球の裏側で売っているものもすぐに手に入るし、消費者もあらゆる情報を手にしています。例えばおいしいコーヒー豆が採れるのはどの国か、厳選した材料を使っているのはどのブランドか、それが安く手に入れられるのはどの店か……。あるレベル以上のものは世界中どこでも手に入るようになったいま、もはや商品の質だけで差別化することは難しくなっています。それよりも商品の可能性を広げることができるパッケージデザインで他の商品と差別化することを重視すべきではないかと、私は考えています。
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