数ある“ウソ”の中で、「ダイオウイカ天」がリツイートされ続けた理由

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今年1月に放映され、16.8%の高視聴率を獲得した番組「NHKスペシャル 世界初撮影!深海の超巨大イカ」。暗闇の中から現れた巨大なダイオウイカの姿に、SNS上では多くの人から驚きと感動の声が寄せられた。その衝撃が冷めやらぬ今年4月1日、SNS上で再びダイオウイカが話題に――。讃岐うどんチェーン店「はなまるうどん」が「まるごとダイオウイカ天」を発売する、というニュースがネット上を駆け巡ったのだ。

目的はキャンペーンを動かすこと

体長18mのダイオウイカを丸ごと天ぷらにして発売――。もうご存知のことと思うが、このニュースは4月1日エイプリルフールの“ネタ”。1日午前0時に同社が商品紹介サイトをオープンしたところ、午前2時くらいからSNS上で話題となり、翌朝から夕方にかけて話題が沸騰。この話題がきっかけとなり、同社のサイトへのアクセス数は通常の24倍になった。

「予想を上回る結果になりました」と話すのは、同社のキャンペーンを担当し、この企画を提案したPOOL inc.クリエイティブディレクター 小林麻衣子さん。「これは、はなまるうどんが毎春実施している来店促進キャンペーンの一環。キャンペーンのメイン企画“健康保険証割引”をドライブさせるために提案したのが“まるごとダイオウイカ天”でした」。

はなまるうどんでは今年、すべての麺にレタス1個分の食物繊維を配合、そして「コクうまサラダうどん」をレギュラーメニュー化した。こうした健康への取り組みを世の中に広く発信し、2013年をはなまるうどんの“健康元年”にしたいと考え、春の来店促進キャンペーンとして提案されたのが「健康保険証割引」だ。これは店頭で「コクうまサラダうどん」を注文し、健康保険証を提示すると50円の値引きをするという企画。「健康保険証」を店頭キャンペーンに活用すること自体、前例がなく大きなチャレンジだったが、はなまるうどんでは話題性を第一に考え、実施に踏み切った。

「こいつら、わかってる」と思ってもらえるストーリーを描く

はなまるうどんは、昨年同時期に「期限切れクーポン大復活祭」というキャンペーンを実施した。これは使用期限切れのクーポンを持参すると50円値引きになるという企画だ。他社の期限切れクーポンも値引き対象とし、そのユニークな施策に注目が集まったが、実際に店頭で利用する人は少なかった。そこで今年は「ネットで話題になるだけではなく、実際に人が動く」ことを重視。「健康保険証割」開始と同時に世の中の話題を集め、はなまるうどんが提案する健康がしっかりと伝えられるよう、新たに二つの企画が実施されることになった。

そのひとつが「レタスまるごとサンプリング」。すべての麺にレタス1個分の食物繊維が配合されたことを伝えるために、新宿駅前や大型ショッピングセンターなどでレタスを配布した。「レタスまるごと1個」のインパクトは大きく、新宿では午前中だけで予定数1000個のうち870個の配布が終了。「新宿でレタス配ってる!」といった声と写真が次々とSNS上にアップされた。「なんでレタス?」という声に応えられるよう、はなまるうどんの健康への取り組みを紹介した特設サイトも用意した。

そして、もうひとつの企画が「ダイオウイカ天の発売」。これはまさにエイプリルフールに焦点を合わせた企画。近年、さまざまな企業がエイプリルフールに“ネタ”をネット上に挙げるようになり、日本でも風習として定着し始めている。拡散後はまとめサイトが登場し、数ある“うそ”の中で話題のトップになれば確実にシェアされ、テレビや新聞などのマスメディアに取り上げられる可能性が高い。この企画ではそこをストレートに狙い、話題の拡散元であり、伝搬力の強い“ネットの住民”をメインターゲットとした。そこから一般に拡散していく流れをつくることを目標とし、「はなまるうどんらしい」ストーリーで、なおかつターゲットが「こいつら、わかってる」と納得し、シェアしてくれるストーリーを模索した。

次ページ「バカバカしいことをリアルに本気でつくる」に続く

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