マスメディアを介し、企業が一方的に発信をする広告だけでなく、企業も消費者もフラットに共存するプラットフォームが浸透しつつあります。プラットフォームの代表例は、ツイッターやフェイスブックなどのSNS。企業はいま、こうしたプラットフォームを活用し、これまでにないコミュニケーションの方法論を模索しています。
それに伴い、企業やその意向を受けた広告会社が発信したいことを考え、伝えていた状況から、まずは生活者の動向を観察・分析し、それに適した情報発信を行っていく…。「ニュートラルな目線で観察すること」から始まるコミュニケーションプランニングが必要とされるようになっています。
電通 プラットフォーム・ビジネス局 開発部 コミュニケーション・プランナーの廣田周作さんは、観察することから始め、さらにソーシャルメディアを用い、ニュートラルな目線で生活者とコミュニケーションを図る方法論を模索してきた一人。廣田さんが6月に刊行した『SHARED VISION』は、氏の考える方法論をまとめた1冊です。
「蟻」の行動観察での発見から、ジャーナリストに
現在は電通に勤務する廣田さんですが、その経歴はちょっと変わっています。学生時代には、工学部に所属。そこで取り組んでいたのは「蟻」の研究だったそうです。なぜ、蟻は垂直な壁やさらに天井を這っても落ちないのかという疑問に対し、足の先から高速で油を出し入れすることで、天井などに張り付いていることを発見。それまでの研究者が、すでに死んでいる蟻を顕微鏡で観察していたところ、廣田さんは植物観察用のカメラで動画撮影し、この事実を発見したそうです。
死んだ蟻を観察するのでは分からなかった事実を、生きた蟻を動画撮影することで発見したことで、動画撮影のおもしろさを認識。大学卒業後は、日本放送協会(NHK)に入社することに。社会とは一線を画す理系の世界ではなく、社会に開かれた場所で新たな発見を伝えたかったそうです。
電通入社当時のアダ名は「つぶやき」
NHKに入社後は、地方局でディレクターとして、ドキュメンタリーやニュースの制作に携わっていた廣田さん。しかし、本来は何かを伝える手段であるテレビであるはずにもかかわらず、実際には放送の枠を埋めることが目的になってしまっていた現実に直面し、NHKの退社を決意。当時、浸透し始めていたインターネット活用に興味を持ち、大学院へ進学されました。
その後、2009年に電通に入社。もともとジャーナリストであったため、クリエーティブ局配属と思っていたが、関係のないコミュニケーションテクノロジー&IMCメソッドという部署へ。離れたかった理系分野に舞い戻ったかのように、始めの1年はデータ解析に明け暮れることに。
一方で、当時日本に普及しつつあったツイッターに着目。普及しつつあったとはいえ、まだ海のものとも山のものとも言えないツイッターを研究する廣田さんを、当時は「つぶやきくん」と揶揄する人もいたそうです。しかし、NHKの在籍経験も活かし、「視聴率とソーシャルメディアの相関関係」を発見。そして、ツイッターを始めソーシャルメディアへ世間の注目が集まるとともに、廣田さんの仕事の依頼も増えていきます。
事件はデータの中で起きている
廣田さんが電通内で注目を集めるようになった背景には、ソーシャルメディアの登場によって、従来の広告の方法論が大きく変わったこと、それに伴い広告会社のビジネスモデルが変化したこともありそうです。
ソーシャルメディアで得たデータから生活者の心を捉えていく。最近では多くの場所で言われていることも、研究者としてニュートラルな目線で観察を続けてきた廣田さんだからこそ、実践できたことと言えそうです。
ニュートラルな目線で生活者を捉え、企業が進むべき方向性を生活者とともに共創していく…。では、具体的にどのように「VISIONをシェア」していくのか。そのプロセスを詳述したのが著書『SHARED VISION』です。
現在、紙版とkindle版を販売中。さらにkindle版は8月末まで期間限定割引キャンペーン(900円で販売中)中です。廣田さんは、現在32歳。広告業界の固定概念に捉われない若手プランナーならではの視点にご期待ください。
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