社会のためになる消費(2)エシカル消費はもうすぐ当たり前になる

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すなわち、100年ほど前まで、私たちは自分の衣食住の基本を自給するか、顔の見える地域の中での取引で賄ってきた。自分が使うモノの製造過程や原料、作り手を知っているモノに囲まれた暮らしを長年人類は続けてきたのだ。きのこや山菜を採りすぎれば来年は取れない。川を汚染したら魚が食べられない。狭いコミュニティ内で不当な価格を押し付けては人間関係が難しくなる。生産現場の環境や人を知っていれば生産過程にも配慮し持続可能な購入と消費を行わざるを得ない。

現在は、お金さえあればスーパーやデパートの店頭で買える時代。それも、中国や東南アジア産の衣料、アフリカの魚介類、欧州の化粧品、豪州の牛肉、南米の野菜等、誰がどうやって作っているのか知る由もない。「匿名のモノ」を生産者や販売者のブランドを信頼して、価格や品質という経済原理に基づいて、何の疑問もなく購入し消費している。

しかし、私たちの先祖は長い間原料を採取し生産して、消費あるいは使用して、最後は廃棄あるいはリサイクルするというモノのライフサイクルを廻しながら暮らしてきた。これに対し現在では、店頭にモノが運ばれるまでの過程、使用後ゴミ箱に入れた後の過程を切り離した「消費」プロセスだけを消費者に提供する。その方が経済合理的でもあった。

しかし、人は本能的に先祖のように自分の暮らしを成り立たせるモノについては生産からのプロセスに関わりたいのではないか。だから、フェアトレードのシアバター石鹸がブルキナファソの女性1000人の暮らしを支えているというような話に共感するのではないだろうか。一方で現在話題のエシカル商品は、機能デザイン価格ともに通常のものと遜色ないものが増えている。昔の自給自足の生活には戻れないが、せめて消費する際にはモノの誕生から終わりまでのモノ語り―それも森を豊かにし途上国の子供たちの笑顔につながる―に寄り添いたい。多くの消費者にはそういう潜在的欲求があるのではないか。そして、価格やデザインを我慢することなく消費者にモノ語りを提供出来る限りエシカル消費への関心は広がっていこう。

河口 真理子(大和総研 調査本部 主席研究員)
1986年一橋大学大学院修士課程修了(環境経済)、同年大和証券入社。2010~2011年大和証券グループ本社CSR室長、広報部CSR担当部長。2012年4月より調査本部 主席研究員。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長。サステナビリテイ日本フォーラム評議委員、エコアクション21審査人委員会認定委員、環境省・環境ビジネスウィメンのメンバー、東京都環境審議会委員。共著書に『SRI 社会的責任投資入門』(日本経済新聞社)、『CSR 企業価値をどう高めるか』(日本経済新聞社)等がある。
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