Lynne Anneのプレゼンの中でそれは「Beyond CSR/Cause Marketing」と表現されていた。たしかにこれまでのPRが得意だったのはCSR(企業の社会的責任)プログラム支援やコーズマーケティング(例えばボルビックのキャンペーンのような)と呼ばれる領域。それらを超えていかねば、というわけで、これはまったくそのとおり。成果としては申し分のないものが世界中にたくさんあるが概してマジメな印象で、プロジェクト名ひとつとっても「XXX啓発活動」など、どこまでもストイック。
それでも目的が達成できればいいのだ!という意見もあるけれど、ソーシャルメディアが普及し、生活者がつながった「共感エコノミー圏」では、潜在的なポテンシャルを活かしきれずもったいないことになっていくだろう。ここで必要になってくるのがクリエイティビティなわけで、もうちょっとそれを因数分解すると、「人の感情に訴える」ことや「人の心理に働きかける」ことに貢献する創造性だと思う。
Lynne Anneの講演では、そのうえでいくつかの事例――男女の賃金格差問題をユーモアたっぷりにキャンペーン化した「DEMAND EQUAL PAY(YWCA)」や熱狂的なサッカーファンのインサイトと臓器提供をコネクトした「IMMORTAL FANS」――などが紹介され、PR ThinkingとCreativityの融合によって「We Can Change the World」と締めくくられた。
2013年に入ってから、僕も「PR×クリエイティブ×デジタル」がカギだと言い続けているが、あらためて新しい時代のキャンペーンがどのような方法論に集約されていくか、その確信を得たように思う。さて、3日間のスパイクスアジアもいよいよフィナーレ。そろそろアワードの結果発表レセプションが華やかに始まり、そのあとに深夜までのパーティが続く。最後のレポートとなる次回では、PR部門受賞作品に焦点をあて(審査の裏側も混ぜ込みながら)、全体を総括してみよう。
本田哲也
ブルーカレント・ジャパン代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。セガの海外事業部を経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。
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