そして2つ目の事例は「コピーライターズクラブ名古屋(CCN)の年鑑」です。
CCNは名古屋のコピーライター(広告会社の垣根を越えて)が中心となり運営している団体ですが、作品自体は全国から応募できます。審査員は地元で活躍するコピーライターと、ゲストとして外から迎えられたコピーライターを合わせた約10名。審査基準は「その作品に嫉妬したかどうか」です。
審査は一般公開で実施し、全国から100名を越える見学者が訪れます。審査結果はその日のうちに全員の前で発表。審査員の講評つき。応募した人にしてみれば、自分の作品の評価を肌で感じるのはすごくスリルを感じるし、もし受賞できず落ち込んだとしても、その横で喜ぶ人がたくさんいたりして、その時の悔しさや苛立ちが来年の受賞につながるという…ハードコアぶり。
私はそんな熱い団体CCNの年鑑(受賞作品集)を2011年、2012年の2年にわたり、アートディレクションさせていただきました。年鑑と言えばCCNの顔。審査会の時の悲喜こもごもを思い出しながら、デザインにひとつ大きなテーマを設けました。
それは「受賞者が受け取った時に、受賞を改めて誇りに思えること」。
そこで2011年に制作したのが「トロフィーになる年鑑」でした。
授賞式でこの年鑑を手に喜んでくれる様子を見て、すごく気持ちが高ぶりました。中部地域が褒めてもらえた気がしたんです。「名古屋で賞を獲ってよかった!」と。また、この年鑑はなんとADFEST2012 デザイン部門でシルバーを受賞。CCNが今までとは違うかたちで注目を集めることができたのも嬉しかったです。
そしてそのモチベーションを共有したまま翌年、制作したのが「スティッキーノート年鑑」です。表紙には600枚の付箋(デザインパターンはなんと200種類!)。年鑑を読んだ人が、表紙から付箋をめくり取って、気に入ったページに貼ることができるというものです。
この年鑑は今年のカンヌライオンズ デザイン部門でまさかのゴールドを受賞!名古屋の色々な方からすごく喜んでもらったし、「なんか、希望が持てた!」と言ってもらえて「名古屋からも世界が狙える」という空気ができた気がするのです。
「スティッキーノート年鑑」の解説ムービー。
そして名古屋で仕事をしていて感じること。それは、関西、九州など、他の地域のように、「名古屋といえばこれだ!」という強烈なイメージがあまりないということです。でもだからこそ、誰が、どんなことをしても自由だし、それを受け入れる土壌があるとも言えるのです。
まだまだ手つかずの、自分たちにも見えていない領域を開発することだってもちろんできる。そこが名古屋でクリエーティブをする一番の醍醐味なのかもしれません。
生まれ育った土地だからポジティブに考え過ぎな気もしますが、でもそれを信じて、受け止めて、これからも前進していきたいと思います。
長々とありがとうございました。
土橋通仁(電通中部支社 アート・ディレクター)
主な仕事はCCN年鑑2011&2012、トヨタホームホーム大臣、ドナルドマクドナルドハウスキャンペーン、ドラゴンズ仮面ライダーV3など。
受賞歴に、カンヌライオンズ金賞、ニューヨークADC賞銀賞、ロンドンD&AD賞銅賞、ADFEST銀賞&銅賞、Design for ASIA 銀賞、広告電通賞、朝日広告賞、日経広告賞など多数。ニューヨークADC会員。
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