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社会貢献型商品は、どこまで消費者の心をつかむことができるのか(2)

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オフセット・クレジット付き商品を、ものと環境の結びつきを再認識するきっかけに

おむすび権平衛は、もともと食や環境に関心があり、かつ健康志向の人たちをファンに取り込むことに成功している。

EVI事務局とカルネコモニターネットワーク事務局が393人のモニターを対象に行った「2013生活者の環境貢献意識調査」(2013年11月9~20日実施)によると、1年以内に、環境保護活動に実際に参加した人は9.9%であるのに対して、寄付をした人は16.3%、保護活動に結び付く商品やサービスを購入・使用した人は50.1%となっている。

時間的物理的制約を受けずに、日頃の消費行動のなかで貢献できる方法がもっともハードルが低く実行しやすいためと考えられる。つまり、環境保護につながることを理解できれば、半数以上の人が環境貢献型の商品を買うということだ。

ここで重要なのは環境貢献型の商品を購入した人のその後の行動だ。その商品に対する満足度が高ければリピーターになり、やがて他ジャンルの商品でも環境貢献型の商品を嗜好する可能性は高い。こうしたユーザーは、ひとつの環境貢献型商品を買うことにより、商品ができるまでのプロセスを深く知り、環境問題への知識が深まり、関連情報への感度も高まることになるからだ。

つまり、環境など商品を通じて社会的な価値を訴えたいのであれば、商品力を高め、ユーザー満足度を高める必要があるが、これらの条件を満たすことで、ロイヤリティの高いカスタマーを育成できることになる。さらに、環境貢献型の商品を購入して環境のための好循環を経験すると、そうでない消費行動には不快感や罪悪感を覚えるようにもなるだろう。

いまはまだ多数派とはいえないが、環境貢献嗜好の消費行動は増加傾向にあり、中長期的には環境保全や地産地消、3R、省エネなど、なんらかの環境貢献価値を伴わない商品は選ばれにくくなっていくと予想される。課題は、「環境価値をどのように伝えていくか」にある。EVI推進協議会の加藤孝一氏らは、日本各地の特産品の特性に合わせたJ-VERオフセット・クレジット付き商品の開発やセールスプロモーションのための施策を模索しており、当初は関係者の理解を得るのに苦労したものの、徐々に成功事例が生まれてきている。

こうしたキャンペーンの広がりは、エンドユーザーに、大量生産・大量流通・大量消費の経済システムのなかで寸断されてきた、ものをめぐる情報を見直し、消費行動を変えるきっかけをもたらしている。毎日の生活のなかで消費したり使用したりするものが、どこでどのように生産されているのか、その現場に思いを馳せることで、自分たちの暮らしと産地の環境とのつながりからいまある仕組みの問題を認識し、解決のための行動を考える消費者が少しずつ増えているのだ。

これまでのところ、EVIが扱うオフセット・クレジット付き商品は食品が主だが、今後さまざまなカテゴリーへと広がる可能性を秘めており、こうした消費行動が当たり前になると、ものづくりには、その原材料の調達先から製造・販売のプロセスにいたるまで、社会問題の解決につながるような「デザイン思考」への要求が高まると考えられる。


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