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この秋編集長に挑戦、元サッカー日本代表・宮本恒靖さんの発信術

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ガンバ大阪、オーストリア1部レッドブル・ザルツブルク、ヴィッセル神戸で活躍した元プロサッカー選手の宮本恒靖さんが、この秋新たな挑戦を始めた。
20年、週刊で発行されてきた「ベースボールマガジン」がリニューアル。11月22日創刊の月刊誌「サッカーマガジン『ZONE』」(ベースボールマガジン社)の特別編集長として参加することになったのだ。

―『広報会議』2013年12月号からの一部抜粋記事です。

メディアは自分の鏡

ワールドカップの日本代表チームでは、トルシエ監督やジーコ監督のもとチームをまとめ、主将としてメディア対応も担った宮本さん。「自分自身やチーム、日本代表がどのように報道されるべきか。もしくは報道されたいのか。メディアというフィルターは、そういうことを考えるきっかけになるもの」と話す。

「自分自身やチームがどう報道されたいのか。メディアは、そのことを考え直すきっかけになるもの」と話す元サッカー日本代表の宮本恒靖さん。

 

宮本さんが「伝え方」「伝わり方」を考えるきっかけとなったのは、自身のブログでのある出来事だった。ガンバに所属していた1999年、オリンピック予選の試合についてブログに投稿した。「毎回、愛着を持って臨んでいるクラブの試合と、選抜され日の丸を背負って行う試合との気持ちの違いについて書いたのですが、結果的に自分の考えがうまく伝わらず、『クラブの試合を軽視して残念』とファンから予想しなかった反応が返ってきました。伝え方の難しさを実感した経験です」。

以降、ブログやメディアなどで自身が発する言葉に責任を持てるよう、感情のままに書いたり話したりしないこと、文章は書いてから少し時間をおいて投稿することなど、一層気を配るようになった。

現役時代は、どのようなメディアに対しても聞かれたことに答える姿勢で臨んできた。試合後、選手は「ミックスゾーン」と呼ばれる報道陣が待ち構えるゾーンを通る。選ぼうと思えば、親しいメディアだけに声をかけることもできた。

しかし、「互いにプロとして、メディアと選手はリスペクトし合うべき」と考え、できる限りたくさんのメディアに答えた。「記者会見なら一斉に、公平に情報を伝えられます。ミックスゾーンでも、当然そうあるべきだと考えていました」。「今日はごめんなさい」。そう言って取材を断ったのは、自分のあまりの不甲斐なさに答える言葉が思い浮かばなかった一試合だけだ。

試合結果によっては、ネガティブな発言を引きだそうとするメディアもある。そうした時には、決して選手やチームの批判はせず、次の試合に気持ちが向かうようなポジティブな発言を心がけた。「たとえ試合の結果が出ていなくても、メディアに対しては、自分たちが目指すサッカーの方向性は間違っていないし、チームの結束は揺らいでいないと言ってきました。

試合後、選手たちが報道陣の取材を受けるミックスゾーン。バックパネルを背にテレビなどカメラ取材を受けた後、ジグザグのコースに沿って、ペン記者の取材を受ける。宮本さんはいつも「できる限り」立ち止まって答えていた。

選手を束ねる主将の立場を考えれば、そう言い続けることに意味があると考えていました」。メディアが伝えたネガティブな報道を取り上げ、「メディアはこう伝えているが、自分たちの目指すサッカーは間違ってない」とチームを鼓舞することも度々だった。

セルフマネジメントの重要性

海外クラブで学んだことも多い。「試合に集中するため、記者会見は試合の2日前まで。チームが前面に売り出したい選手を戦略的に出す。クラブとしてのコントロールが効いていました」。スポンサーへの対応もしかり。オフで一時帰国した際に受けた取材のことで、後日クラブのマーケティング担当者から注意を受けたことがあった。クラブのスポンサー企業のロゴが入ったシャツを着ないで対応したためだ。「海外クラブは『やり過ぎでは?』と思うほどスポンサーへの対応を気にかけます。

キャプテンマークをつけて臨んだ日本代表戦では、試合の結果に関わらず常にポジティブな発言を心掛けた。写真は2006年サッカーW杯ドイツ大会日本代表に選ばれ、ガンバ大阪のクラブハウスで会見する宮本さん(中央)。写真/J.LEAGUE PHOTOS

しかし、その徹底ぶりは、経営視点で考えれば、日本のサッカー界も見習うべきところがあると思います」。こうした経験を通して、海外と日本のメディアやスポーツマーケティングに対する考え方の違いを感じてきた宮本さんは、日本でも「選手自らが自分をマネジメントしていく意識をさらに高める必要がある」と話す。

「カズ(三浦和良)さんは、常に自分が見られていることを意識して行動していました。いまや、SNSで簡単につぶやかれる時代。そういう一つひとつの意識や行動が、選手やチームのステイタスを高めてくれるはず」。

次ページ 「宮本さんの夢は、サッカーという感動」へ続く