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コラム

脳のなかの金魚

何かを得た時、何かが失われるという原理について

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――第二幕
大学。真理と数人のクラスメート。

女子:最近、俊、見ないね。
真理:ほんとだね。

俊一の部屋。一心不乱に絵を描いている俊一。一応いくつか完成。
キャメラ、絵に寄っていく。だいぶましな肖像画。
今度はキャメラ引くと、4人の友達が集まって絵を見ている。彼らの表情から、わりとましな絵であることがわかる。

真理:すごいレベル上がったね。
男子1:やっぱり俊はなにやってもすごいな。
真理:乾杯しましょ。新しい才能の誕生を祝って。
男子1:俊。Krugふんぱつしろよな。おまえのお祝いなんだから。
   (立ち上がって、キッチンから、krugをもってくる。)
男子1:まだ、描いてんのか。あけるぞ。(krugあける。女子歓声)

音に気付き俊一、ここでやっと筆を止めて振り返る。つまり、初めて顔が見える。
顔が変わっている。むくんでいるというか、どこかボヨンとしている。ずいぶん平和な顔。一同ぎょっとする。しばし、沈黙。やがて、4人のアタマから煙がゆっくり上がる。

男子2:俊。krug飲むか。といっても、おまえのだけど。
俊一、シャンペンの注がれたグラスとkrugのボトルを珍しそうに見比べる。4人の煙は激しさを増す。
俊一:krugって蛙か、ゲロゲーロだ。ゲロか。きたない。
4人、煙、ますます。
俊一:(krugひとくち飲んで)ソーダ水、ヘンな味だ。ゲロゲーロだ。
   (もうひとくち飲もうとして、シャツにこぼしてしまう。突然泣き出す。)
   つめたいよお。つめたいよお。つめたいよお・・・。
4人、煙、絶好調。

画廊。俊一の肖像画数枚かかっている。どれも素晴らしい。画商とおぼしき金持
風紳士たち、その前で交渉してる様子。ひとりが電卓取り出す。

俊一の部屋。真理とセックスしている。シルエット。真理が上になっている。

真理:ああすごい。俊。今までと全然ちがう。すごい…。

画廊。紳士の一人が俊一の画を買っている。小切手記入中。店の人が壁から画をおろしているところ。

次ページ:「第三幕」


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