本欄では、広告主、広告業、メディア、クリエイターなどの垣根を超えて広告界の未来を本音で語りつくした2日間のセミナーの一部を紹介します。
【A2】4月15日(火) 11:00〜12:00
これからの“メディア”の捉え方
<登壇者>
- ネスレ日本株式会社 コンシューマーコミュニティ開発グループ ネスカフェアンバサダービジネスユニット部長 津田 匡保 氏
- カルビー株式会社 マーケティング本部 Jagabee事業部 部長 山村 眞 氏
<モデレーター>
- 月刊『販促会議』中澤 圭介
お客様の声は可能な限りダイレクトに聞きとる!
──顧客の声を吸い上げるために取り組んでいらっしゃることは?
山村:「カルビーサポーターズクラブ」という会員制クラブを設け、現在約9000人のお客さまにサポーターになっていただいています。その内容は、新商品の情報をお届けするほかアンケート調査やグループインタビューを行い、お客さまのご意見を直接うかがうこと。時に、リサーチ会社にお願いすることもありますが、大切なのはお客さまとの距離感なので、その際にはなるべく弊社社員がモデレーターを務めるようにしています。また、2006年から商品パッケージのお問い合わせ欄に「声をおきかせください」と印字するようになりました。この表示に切り替えたところ、お客様相談室に寄せられる声が週3〜400件から7~800件増加。その多くが前向きなご意見やご提案です。
津田:日本で年間500億杯のコーヒーが飲まれているうちの6割が家庭内、4割が家庭外です。弊社は圧倒的に家庭内のシェアが高いため家庭外を強化していきたい背景がありました。そこで、家庭外への普及のために、家庭用に開発された弊社の「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」というコーヒーマシンを無料で貸出しする「ネスカフェ アンバサダー」という仕組みを開発し、会員の方からface to faceでご意見をうかがうようにしています。ネスカフェ アンバサダーの方々からのご意見は我々にとって、サービス向上のために大変ありがたいものです。ただ“ご意見を拝聴する”のではなく、我々もしっかりと考えを伝え、社員と話すような感覚でざっくばらんに意見交換をさせていただくようにしています。その方が本音で話せて結果的に良い物が作れると確信しています。
誰に喜んでもらうか。ターゲティングの明確化を図る
──顧客の声を聞くために、重視しているポイントは?
山村:どのお客さまに喜んでいただくかをフォーカスすることが重要だと思っています。「Jagabee(ジャガビー)」のプロモーションでは、まず「誰に買ってもらいたいか」をできるだけ具体的にイメージし、何歳でどこに住んでどこに勤めているのか、相当真剣に一人の顧客像をつくり上げました。いまで言う「ペルソナの設定」なので実在はしないのですが、「その人の声を聞こう」とするイメージを社内で共有していくことで、外部のクリエイターの方や流通の方へのプレゼンも非常にやりやすくなりました。
津田:ネスカフェ アンバサダーのそもそものきかっけは、東日本大震災のときに被災地支援としてバリスタをお届けしたことでした。人の集まる場所にこのマシンがあるとその場がにぎわい、活性化することに気づいたのです。日本にある約600万のオフィスのうち大きな企業には自動販売機が入っていたりしますが、残りの9割の20人以下の小さなオフィスの方々は、自分たちで飲み物を買われています。この層にプログラムを訴求したいのですが、数が膨大で1件1件営業して周る訳にはいかない。そこで「ネスカフェ アンバサダー」を募って、その方に協力してもらい、オフィスに導入いただくという手法を取りました。ネスカフェ アンバサダーの方々から使用中の写真やコメントをWEBに投稿していただいたり、メールアンケートにご協力してもらったりしています。無料の製品を送って終わりではなく、継続的に「お客さまの声を吸い上げる仕組み」を構築しています。
──吸い上げた声をどのように生かしているのですか?
山村:一度、ある商品についてお客さまから「以前の味と変わってしまったので、二度と買いません」という厳しいご意見をいただいたことがありました。そのお客さまへはリニューアル前のプロトタイプの商品と「ご意見をお聞かせください」といった内容の手書きのお手紙を一緒にお送りしたところ、ますますファンになっていただけました。大切なのは、すぐに行動することと誠意をお伝えすること。お客様相談室に寄せられた声は、毎週全社員にイントラで配信して確認できるようにしています。
津田:一つの極端な例ですが、あるお客さまが、自ら、「自分のオフィスで毎月何杯のコーヒーが飲まれるか」を計算するエクセル表を作っていらっしゃったことがありました。これを作成するのには時間も手間もかかったと思います。ネスカフェ アンバサダープログラムのためにここまでしていただけたのか、という感激を覚えましたね。そこで、必要なカートリッジ量をWEBで自動計算できる「コーヒーはかる君」というシステムを作ったのです。きっかけは、たった一人のお客さまの声だったのですが、いまや月間2-3万回はご利用いただくサービスになっています。一人の声であっても、サービスを改善できるヒントはあるのだと改めて気づきました。
≫次ページ 「顧客の声にすぐ対応できる組織づくりを」に続く
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