【C2】4月15日(火) 11:30~12:30
世論をつくる企業・団体の活動と広報の連携
<登壇者>
- 九州旅客鉄道株式会社 広報室長 森 勝之 氏
- 一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 事業戦略広報部戦略広報課長 高谷 正哲 氏
ファン化を促す「チラ見せ戦略」
——東京オリンピック・パラリンピック招致や、寝台列車「ななつ星 in 九州」の広報活動を実施するにあたり、どのような計画を立てましたか。
一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 高谷 正哲 氏
高谷:2020年に開かれるオリンピック・パラリンピックの東京招致が決まりましたが、背景には2016年大会の招致活動の失敗から学んだことが生かされています。
2020年の招致を目指した広報活動では、組織体制の強化を図りました。組織名は、企画広報部から戦略広報部に変更。チームメンバーは、担当する業務内容を具体的に定義した上で適した人材を集めた結果、2016年の招致に比べて、スポーツ界のバックグラウンドのあるスタッフが多く揃いました。
また、2つ目の進化のポイントは、戦略広報部としての明確な達成目標を定めたことです。2012年末までに都民や国民の支持を獲得することなど、目標とその達成時期を決め、それを実現するためにすべきことと、しなくていいことを整理。これをスタッフ全員が理解した上で、広報活動を進めていきました。
森:ななつ星の広報活動については、「広告宣伝はしない」「賑わいをつくれ」というミッションが課せられ、その対応策として「ななつ星好きを作ろう」という計画を立てました。ちょっとしたことでも、少し手間をかけて様々なリリースを出していく戦略です。
最終的に2年間で40回以上の記者会見やリリース発信を行いました。特に運行開始の2013年には、30以上ものリリースを打っています。運行開始の1カ月ほど前からは、毎日のように記者さんと接し、テレビカメラを回してもらい、それを九州全域へ発信していく活動をしていました。
とはいえ、ななつ星に関わることは些細な事でも発表していきましたが、社長の方針もあって、肝心の車両だけは特注の黒いラッピングをするなどして、一切見せないようにしました。
新聞記者の方からは、「JR九州のチラ見せ戦略」などと言われていましたが、少しだけ見せて関心を煽り、次は何があるのかという興味を引きながら、ななつ星好きになってもらうことを狙ったのです。
——具体的な広報活動について教えてください。
高谷:2016年の招致の際は、広報の発信するメッセージが、かなり右往左往していました。今思えば、2年ほどのキャンペーンの最中に、途中でメッセージやスローガンが変わったりしてしまうのは、かなりマイナスだったように思います。
その反省から、2020年の招致の際には、とにかく一貫したメッセージを発信していくことにしました。仮に、メディアの方から批判めいたニュースを書かれたとしても、簡単にぶれないと決めたのです。
この時代において、安心で確実で素晴らしい、革新に満ちた大会を東京で開催するということを、とにかく言い続けました。
また、最後の局面でどのようなイメージを伝えるべきか、そのためにはどのような広報素材が必要になるのかについて、2016年招致の反省から見えていた部分もありましたので、とにかく日本のメッセージが伝わるようなビジュアル素材を揃えるため、最初から計算して撮影し続けていました。
このような準備を行っていた都市は、他にはありません。競合を研究し、最初から他都市にはできない広報素材の収集に取り組めたのは、成功要因の1つであったと思います。
——トップを広報マンとして前面に出す工夫も見られました。
九州旅客鉄道株式会社 森 勝之 氏
森:社長の唐池恒二と、工業デザイナーの水戸岡鋭治先生を常に前面に押し出し、この2人の情熱がななつ星を作ったのだということを発信しました。これは、社外向けのメッセージでもありますが、同時に社内へも、ななつ星に対するトップの姿勢が伝わっていくことを期待していたのです。この点を軸にしながら、コミュニケーションを設計していきました。
≫次ページ 「風評を払拭して形勢を逆転」に続く
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