最終的なゴールは「社員全員がマーケターになる」こと
——富永さんと水書さんは、それぞれマーケティングを統括する立場ではありますが「CMO」という肩書ではないですよね。現場の実感として、今後、「CMO」は日本企業に必要と思われますか。
富永:どんな会社でも、もちろんCMOはいた方が良いと思います。会社の様々な議論の局面で、マーケティング的な思考を提供して、経営の意思決定に影響を与えていくという意味で。
水書:当社でも以前は、マーケティングはマーケティング部が行うもの、という認識がありました。ですが、それではマーケティング部が考えた戦略を会社全体で実行できませんし、マーケティング発想が社内に根付いていかないという課題がありました。
富永:そうなんですよね。例えば、競合が新しい商品や価格戦略を打ち出してきた時に、ついつい追従して同じ施策を始めてしまう企業が非常に多い。でもそれは、「同質化」であって、「差別化」ではない。そう気づけるかが重要なんです。
「同質化」に向かわないよう歯止めをかけられる、マーケティング的な思考こそが企業に必要だと思うのです。
水書:ただ、CMOが必要かというと、ピップのように国内市場を中心に展開する企業では、ちょっと違うのかなとも感じています。今、ピップという企業にとっての理想は、社員全員がマーケターになること。企業一丸となってマーケティング活動に参加して、それぞれの役割を果たしていくことが重要だと考えています。
富永:会社全体でマーケティングから意思決定をするというDNAを培っていけば、自社の競争力やユニークさをより明確にする後押しになりますからね。
水書:そういう思いもあって、経営陣や工場長を含めた開発部門の主要メンバーに対し、マーケティングの考え方を共有するためのセミナーを半年間ほど、月1回のペースで行ったこともありました。
富永:私が常々思うのは、マーケティングという仕事は「胸が躍る」ような特別な思いを味わえる最高の仕事なんですよ。
マーケター自身が描いた設計図通りに、消費者から反応が返ってきた時の「これだ!」という達成感は格別ですよね。だから仕事が楽しいし、もっと挑戦したくなる。そういう良いフィードバックを体感できる組織を各社で作っていけると、日本の企業のマーケティングが非常に面白くなりますよね。
水書:その通りですね。とにかく現場でマーケティングに関わっている皆さんの意思が、最も重要だと思います。強い意思を持っているかどうかで、様々なアイデアを実現する可能性も変わりますし、成果も変わってくる。それはピップに入社して、目の前にいるスタッフが成長する姿を見る中でも実感しているところです。
ぜひ、マーケターの皆さんは強い意思を持って、優れたアイデアを実現し続けてほしいと思います。
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