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コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

「新しいものにワクワクしつつ考えられるか?」 ――VOYAGE GROUP 取締役CCO青柳智士氏に聞く

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——移り変わりが激しい時代だからこそ、あらゆる変化に興味を持ってくれれば、いち早く対応することができるということですね。そうした素質の見極めを採用レベルから行っているという前提はあるものの、入社後に社員を伸ばすために行っていることはありますか?

まず、個のレベルでは「ライトニングトーク」というエンジニア向けの勉強会をやっています。短い持ち時間の中で、自分たちのやってきたことを次々に発表していく形式のプレゼンです。

それを見ることで「こんな技術があるのか」ということや、その人自身のことが伝わり、興味が湧いてきます。それが関心に変わり、関心が高まると問題意識を持つようになるので、最終的には新規提案や改善提案へとつながります。このエコシステムが回るよう、個人に対してどんどん参加を推奨しています。

つまり、「こういう勉強をした方が良いよ」ではなくて、自発的に興味を持てる環境を仕組みとして用意するという感じですね。

同様に、組織レベルでは評価のシステムについて見直しました。そもそもITソリューション企業というのは、当社に限らず経営陣とエンジニアとが対立・衝突してしまいがちです。それはエンジニアが自分たちの評価に対して納得度が低いことが原因で生じます。

当社でもそうしたことが起きていたので、その解消を狙い、「評価への納得度を高める」ようにしました。具体的には、エンジニアの評価軸を二つにしました。一つが事業部のミッションをどれだけ達成しているのかという評価。もう一つが、プログラミングの能力の評価です。それ行うのが「技術力評価会」です。

「技術力評価会」については、自身よりも上の「スペシャリスト」に評価してもらいます。その際、単にプログラミングコードがきれいに書けているかどうかは、仕事の本質ではありませんので、「なぜそのコードを書かなければいけなかったのか」「どうしてこのコードを書いたのか」をプレゼンして説明するスタイルにしています。

そうした説明をするにはかかわる事業の目的と本質を理解しなければなりませんから、そこで双方が手を取り合える関係性が生まれるのではと考えたのです。狙い通り、この評価の仕組みを取り入れたことで、エンジニアの自身の評価に対する納得度が劇的に高まりました。

——出版業界に例えると編集と営業で起こりがちな関係性ですね。さまざまな業界で、こうしたことは起きていそうです。

どこの業界でも、職種やセクションが違うと業務についての理解も違うので、対立・衝突が起こりやすいですよね。でも、その対立関係を仲間関係にしていくためには、構造を変化させるというより思想レベルで変化させることが必要なのです。

そもそも当社の場合、すでに経営理念に沿った人材を採用しているので、あとは土壌さえ整備すれば人材は勝手に育っていくと考えています。だから、土壌となるものの一つである、社内の雰囲気づくりは大変重視していますね。我々の理念の一つである“挑戦し続ける”ということを体現するために、AJITO(アジト)というバーを社内に作っています。それ以外にも、意外なようですが毎年社員運動会を催したりしています。

我々の業界は流れが非常に速いので、組織の改編などでひょっとすると、自身がかかわっている事業がなくなってしまうかもしれない。そのとき、「この事業がなくなるなら会社にいる意味がない」となるのではなく、やる気を持って他の事業部に移ったり、他のミッションをやったりする人であるためには、会社に対するエンゲージメントが高くないといけません。

そのためにも、いろんなところにセレンディピティを誘発させるような環境をつくったり、納得度の高い評価制度をつくったりする必要があります。これが、私が力を入れて取り組んでいることで、以前よりも大きく改善されていると思います。

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