講演者
後藤 洋(トライベック・ストラテジー株式会社 取締役COO)
ネットに掲載されるあふれんばかりの情報に、今消費者は「情報疲労」に陥っていると後藤氏は言う。情報が多すぎて一体何が正しくて何を信用していいのかわからない状況にあるというのだ。
そこで力を発揮するのがオウンドメディア(企業が直接運営するコーポレートサイトやパンフレット、広報誌等)だ。オウンドメディアは、生活者が自由な発想で簡単に情報発信できるSNSとは違い、「企業のオフィシャルな情報」という意味で信憑性がある。
では、オムニチャネル時代におけるオウンドメディアの役割とは?
まず、前提として生活者とメディアの接点は非常に多岐にわたる。テレビ、広告、新聞、雑誌。それらのどのフレーズやタイミングで消費者の行動スイッチが入るかはわからないため、あらゆるチャネルを駆使してはじめて購買につながる行動へと移すことができる。
そんな中、オウンドメディアに消費者が訪れる際は必ず何かしらの「目的」を持っている。新聞や交通広告など、何かしらのメディアで目にした情報から、「この商品のことをもっと知りたい」といった明確な目的のもとアクセスしているのだ。
この「消費者の興味」をしっかり捕まえることがオウンドメディアの役割であり、それを叶えることで購買へとつながるチャンスがある。
オウンドメディアの成功事例としてユニークなものを紹介すると、熊本県のゆるキャラ「くまモン」があげられる。九州新幹線の開通をきっかけに、熊本県のPRを強化しようと誕生したゆるキャラだ。
例えば、「熊本県はこんな観光地です」と何の工夫無しに情報を一方的に伝えても多くの人は興味を示さないだろう。ところが熊本県は、熊本を好きになってもらうきっかけづくりとしてゆるキャラを作り媒体に載せていった。
これは生活者とコミュニケーションがとれる「伝わる」情報であり、くまモンは熊本県にとってのオウンドメディアと言えるのだ。
最後に後藤氏は、トライベック・ストラテジーが作成した「47都道府県のオフィシャルサイトランキング」を紹介。生活者に各都道府県のオウンドメディアをくまなく触ってもらった上で10個の質問に答えてもらい、その結果をスコアリングしたものだ。
質問の内訳は、①どれだけ使い勝手が良かったかのユーザビリティを5問、②企業らしさが伝わったかのコミュニケーションで4問、③総合的な評価、ロイヤリティの計10問。結果は、1位沖縄、2位静岡、3位茨城、東京は40位、最下位は岐阜となった。
首位の沖縄は、美しい海のメインビジュアルやご当地グルメなど沖縄にしか伝えられない「らしさ」を豊富に盛り込んでいる。3位の茨城は、シーズナブルなお祭り情報をビジュアルに落とし込み、分かりやすさを追求した。
一方、40位の東京は文字の羅列ばかりで「らしさ」は何も伝わらない。これらを分析することで、好かれるオウンドメディアの形がはっきりしてきた。上位は「らしさ」を土地や人といった資産で伝えており、反対に知事を前面に出し文字ばかりのアプローチをした県は評価が低い。
伝わるオウンドメディアとは、① ユーザビリティ②コミュニケ−ション力③ロイヤリティの3つが総合的に優れている必要があり、企業アイデンティティ=「らしさ」とは何かを考え表現していくことで、伝わるオウンドメディアが確立するのではないかと後藤氏は解説した。
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