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コラム

宣伝会議 インターネットフォーラム2014 レポート

老舗企業にWEB・デジタルの力を!昭文社のデジタル活用奮闘記 ~企業イメージ改革から台湾・タイでの30万人ファンづくりまで~

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講演者

  • 鶴岡 優子(昭文社 経営企画室 課長)

1960年に地図の版元として創業した昭文社。老舗企業ながらWEB・SNSを軸としたユニークなコミュニケーション活動を展開していることで知られている。同社がマーケティング・コミュニケーション活動に力を入れるようになったのは、創業50周年を迎えた2010年のこと。その背景には、「時代に合わせて経営戦略や事業が変化しても、企業イメージやマインドセットがなかなか変わらない」という、同社が抱えていた課題があった。

ドライブマップ、グルメ本、海外旅行ガイドブックと、時代を経て豊かになっていく人々の生活に合わせてさまざまな商品を展開、民間向けの地図出版物でシェアナンバー1を誇る同社は、社名の知名度も企業としての信頼度も高い。ネットの台頭による地図出版物市場の縮小も早くから予見し、それに対応するため、新規ビジネス領域の開拓にも取り組み続けている。例えば旅行ガイドブック約130冊分の観光情報を搭載したカーナビソフト「マップルナビ」や、「まっぷる」「ことりっぷ」ブランドの自治体や他業種企業とのコラボレーションを通じて、観光コンテンツを強みに出版ビジネスの隣接市場へと事業領域を広げている。

昭文社 経営企画室 課長 鶴岡 優子 氏

こうして時代に合わせて事業を変革させてきた同社だが、社外からの「昭和のまじめな地図の会社」という企業イメージは依然として強く、先進的なビジネスを展開しているというイメージはなかなか浸透しなかった。また社内でも、多岐にわたる事業を展開するゆえ、企業としての方向性の理解度にバラつきが出ていたという。「会社の現在の姿と、将来にわたって目指していく方向性を社内外に情報発信していくため、コミュニケーション活動を活性化させる必要性があった」と経営企画室 課長の鶴岡優子氏は話す。

2010年、周年記念事業を担当することになった鶴岡氏は、その活動を通じて、限られたコミュニケーション予算と社内のリソースを最大限に活用するという、現在の同社のコミュニケーション戦略の基盤を築いた。周年事業における主な活用メディアは、自社ビルのエントランスと周年特設サイト、そしてツイッター。自社サイトもリニューアルし、商品情報をただ紹介するだけでなく、社員に商品開発秘話を聞くインタビューなど月2~3本のコラムを公開するようになった。

「ツイッターを活用し始めたのは、ユーザーと直接、旅の話がしてみたいと思ったのがきっかけ。当社のような老舗企業は、新しいツールの導入には慎重だったが、『周年記念の1年間限定』での活用とすることでハードルを下げることができた。まずはライトに使い始め、一定の成果を挙げてから継続的な活用につなげていくという方法は、経営や社内の理解を得る上で有効だと思う」と鶴岡氏。

現在までに、昭文社グループが運用するSNSアカウントはフェイスブック6つ、ツイッター3つの計9つに増えた。公式サイトのコンテンツの転載だけでなく、SNSオリジナルのコンテンツの企画制作にも力を入れている。「経営企画室ではメンバー6人が、プライベートの旅行で撮影してきた素材を有効に活用している。編集業務の経験者が多いこと、また旅行好きな社員が多いという当社ならではの強みを生かしている」と話す。

近年では、より直接的に新規事業に貢献できる活動と考え、昨年には台湾版のフェイスブックページをスタート。国が主導する外国人観光客誘致の動きに呼応した取り組みだ。

「当社としても今後、インバウンド事業を拡大していきたいと考えている。その際、フェイスブックがコミュニケーションプラットフォームとして機能すれば。台湾は24万件のいいね!のうち、8~9割が若い女性。彼女たちに向け、日本が誇れる観光スポットやグルメを紹介するオリジナルコンテンツを制作・発信している。今年の年初にはタイ版もスタートし、現時点で13万のいいね!が付いている」。

社内ではマーケティングへの意識が高まり、SNSを活用した販促など各事業部でのプロモーション活動が活発化している。また、紙とデジタルを連携させたビジネスの創出にも力を入れており、2012年には、『まっぷる』の購入者がデジタル版を無料で閲覧できるアプリ「マップルリンク」をローンチした。

アプリ経由で宿泊施設の予約をすると、代金が5%オフになるサービスも付帯されており、ダウンロード数は現在までに120万件にのぼる。海外事業については、台湾で2013年に『ことりっぷ』の繁体字版を出版するとともに、訪日外国人観光客用アプリもローンチした。

「まだ商品がない中で、WEBやSNSを使って、まずはコミュニケーションを走らせる。そしてメディアパワーがついてきたところで商品・サービスを投入し、一気にプロモーションをかけていく。コミュニケーションを起点としたビジネス創出をアジアで実現することができた。老舗企業も、デジタルの力を活用することで、コミュニケーションやビジネスの可能性をどんどん広げていけることを感じている」と話した。