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コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

「特異点に気付くためには、定常的な状態が感覚でわからないといけない」——パイプドビッツ 佐谷社長に聞く

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「たまたま起きた」が10回続いてしまっていないか?

——そうした「考える癖」をつけるために、どのようなことを行っていますか?

まず、言い続けること。そして実際に見せることですね。例えば、何か気になったことがあるとします。それが大きな課題につながりそうならば、実際に掘り下げてみせて、「この気付きは、実はこんなに大きな問題につながっていたんだよ」と指摘する。この一連の流れを、ストーリー立てて会議の時に説明することもあります。

——実際に示すことで、理解を促すわけですね。

それもありますが、実はそうした課題の多くに現場のスタッフは気付いていることが多いのです。ただ、それが慢性化してしまって、気にならなくなって、麻痺してしまっていることもあります。だから、小さい現象から体系的に、構造的な問題を発見して、整理して対策していける人を育てるには、気付きを促しつつ、それを言い続けることが大切だと思っています。

また、これは先ほどの「数字を扱う力」とも関係が深いのです。「これは解決すべき」「取り組むべき」と気づいたことが、本当にそうなのか、それを表現する武器として統計的なものを使えるかどうか。それができれば、数字を使って論を組み立てられる。でもそれがないと「今回はたまたま、、、」といって見過ごしてしまうことになる。当社に限らず、「たまたま」が10回くらい続いていることは多いのではないでしょうか?

特異点を見付けるには「平常の状態」を身体感覚で分かっておくこと

——ネット環境が発達してきた時代だからこそ求められるのが、「統計を武器にする力」と「気付く力」であるということですね。

そうですね。昨今のキーワードになっている「ビッグデータ」であれば、おびただしい量のデータに囲まれて、その中で個性なりを見つけたうえで、リーダーシップを発揮しなければならない。そうすると、データの波に溺れないためのデータマネジメントスキルは必要でしょう。大量データの中から特異なものを発見する。そうした身体感覚の敏感さがまず重要なのではと思います。

ただ、通常がどういう状態なのかが分からないと、それが特異点かどうか分かりませんから、特異点を見付ける、気付くためには「定常的な状態」を把握する力も求められます。「いつもならこんな感じなのに、その中でこういうデータが出てきたということは、どんなメッセージがあるんだろうか?」と考えられるか。そういう、大量のデータを分かりやすく大づかみで「こういうものだ」と感じられるような、自分なりの常識やセンスが身についていないといけないし、さらに常識・センスを時代に合わせていかなければなりません。

——世の中の流れというものを含めて常識、つまり普通なところをしっかりとウォッチしつつ、何か出てきた時にストーリーが作れる力が求められるということですね。

そうですね。流れの中で特異点を見つけ出して、そこからどう舵を切ってストーリーをつくり、メッセージを発信できるかは大切です。当社の場合、例えば「PaaS(Platform as a Service)」という言葉を3年前に使ったことがそれにあたると思います。基幹サービスの「SPIRAL」というクラウドサービスがあるのですが、これも最初はASPだったのですが進化して、SaaS、クラウドとなっていきました。

そうした中で、時代の流れを見て「SPIRALはPaaSです」とあえて言うようにしました。その時すでに「PaaS」という言葉はあったもののほとんど使っておらず、クラウドという言葉の方が広まっていました。ただ、自社サービスの特徴を理解してもらい、他社と差別化するには「PaaS」と呼んだ方がいいと思い、決断したのです。

これはブランディングに近い例ですが、やはりこれだけIT化が進んでデータが活用されていくからこそ、統計的な定住状態を身体感覚として持っておくことは本当に重要だと思います。

——そういう身体感覚を鍛えるために有効なことはどのようなことだと考えますか?

例えば、営業の現場なら、「10回商談に行ったら何回成功しているか」が分かるかどうか。もしこの質問に答えられない事業部長がいたとしたら、それは毎週毎週、成功率が何割かを常に意識していないから。だから、何が当たり前か分からない。飲食店のオーナーが、1日の売り上げがいくらなら「今日はよかった」と言えるかが感覚的に分かっているように、日々の仕事の中でそういう数値を意識することでしか鍛えられないと思います。

——さきほど「特異点を見付ける」という話がありましたが、営業の現場でも「通常の成功率」が分かっていると、特異点も見つけやすいですよね。

そう。例えば、商談して見積もりまで提出する確率がだいたい2割だとすると、1日5件商談したら1件は見積もり提出までいくということ。それがわかっていたうえで、見積もり提出まで行く商談が非常に多くなっていたとすると、それは「このサービスがニーズにかなっているのかな?」とか「状況が変化しているのかな?」などと考えるようになる。マネージメントではそういう力は確実に求められますね。

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