コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

社会問題を仕事と結び付けて「自分がやらねば」と思えるかが重要——ガイアックス 代表執行役社長 上田祐司氏に聞く

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月に一度の全体会議で部門ごとの損益計算書までも共有

——そういうことを考えられる力が求められる背景というのは、どのようなところにありますか?

今の世の中は、さまざまな情報やツールが発達してきたので、「出し抜いてやろう」とか「自分だけ儲けられればよい」ということが、成り立たない時代になっていると思っています。

そうした時代においては、指示されて仕事をする、スキルと労働時間の掛け合わせで成功するといったことではなく、自然に「これって何とかしなくちゃいけないよね」という気持ちになり、社会の中に会社も個人も溶け込んで、やるべきことをやっていくような形でなければ難しいと思います。

もちろん会社ですから、業務指示がないわけではありませんが、結局自ら「これを何とかしたいと思います」という、使命感のあるタイプの人じゃないと、うまく回らないと思っています。

——そもそも使命感のある人を採用しているのだと思いますが、それを会社の中でさらに伸ばすためにどのようなことを行っているのでしょうか?

情報を徹底的に共有することです。当社のサービス自体が、人をつなげ、社内コラボレーションを活性化するものですから、当然まずは自社がということで、風通しを良くしています。月に1回行う全体会議では、例えば現金残高も含めて他事業部の損益計算書も常に共有していたりします。

モチベーションの高い人は別に何の指示も出さなくても、私が「会社としてこんな状況で、トップとしてはこんなことが課題だと思っている」などと話すと、指示を出さなくても「それなら、こうしたほうがいいですよね」と言ってきてくれる。会社が何か発表することが、さらに社員の「こうしたら~」という自発を促すという、いい循環になっていると思います。

——ほかに、自発を促す仕組みのようなものはあるのでしょうか?

今年から制度化したものとしては、事業ごとに希望があれば子会社化して、その事業のマネージャーが子会社の役員になったりできるようにしました。しかも、行使価格にルールはあるものの、例えば発行株式が100だとしたら、それに対して50のストックオプションがあります。さらに、この制度は新規事業だけではなく、既存事業も対象にしています。周りからは「これは富の流出じゃないのか?」と言われていたりもしますけど(笑)。

——それはすごい制度ですね。どのような経緯で始めようと思ったのでしょうか?

実は、アプリのレビューサイトから始まったAppBankという会社は、当社内でずっと運営していました。社長の村井智建さんも当社の100%子会社の事業としてどんどん拡大していったのですが、もっと社会にコミットして拡大し、人を巻き込むには“経営陣に株が必要だ”と。そうすることが結局はガイアックスのメリットも大きくなるというので、けっこうな比率の株を譲渡しました。

当たり前ですが、その事業に関しては筆頭株主が本人ですから、もはや私より強くコミットしているわけです。結果、ものすごい勢いで成長しています。この経験を踏まえ、制度化しようと思いました。

情報をどんどん発信することで、顧客からの問い合わせが来る状況に

——「自分たちで自発的にどんどんやっていく」という環境ではありますが、そうした中でも「さらにこんな力をつけていってほしい」と思うことはどんなことでしょうか?

ひとつは、途中で変わってもよいから、夢やライフプランを持つこと。例えば、ある事業を担当しているのに、そこに目標がなく日々こなしているような状態は良くないですね。

より上を目指して、例えば先ほどの学校におけるソーシャルメディアのサービスであれば、「いじめにおける自殺をなくす」とか、「日本中の学校に普及させる」とか、「これならできる」、ということに立脚したものではなく、「こうありたい」という理想の形の夢を持っていてほしいですね。

もうひとつは、自分自身でどんどん情報発信するようになってほしいです。当社はソーシャルメディアサービスの会社なのですが、自社のソーシャルメディアポリシーは、言ってしまえば「個人に任せるから、自身で考えて」みたいな感じなんです(笑)。

これは、あえてそうしています。冒頭、「出し抜くような事業は成立しない」と言ったように、当社のビジネスにおいても当然ノウハウはもちろんありますが、単純に「これは世の中に必要だよね」と思っていることをやっているだけなんです。

だから、別に隠す必要性はないわけですから、社員の「こんなことをやりたい」というのは、どんどん表現してもらいたいですね。

——貴社のサイトを見ると、コンテンツの一つひとつが、まさにそうした感じになっているように感じます。

会社としては、やはりソーシャルメディアやインターネットによる情報発信には力を入れています。なので「やりたいことを言うなら、ソーシャルメディアとかインターネットで」という面はあると思います。

その一つが、「ガイアックス ソーシャルメディアラボ」というサイトなのですが、ここには、当社がこれまでコンサルで積み重ねてきた事例や有意義な情報をどんどん出すようにしています。そうすると、お客様の方から問い合わせいただいたり、営業に行くと、先方がすでに情報をご存知だったりということが生じています。

——コンテンツを充実させて顧客に見つけてもらうということですね。

そうです。ラボを始める前からも、自社の情報を発信することで、その情報をみたお客さまから問い合わせをいただくという効果を実感できたので、2008年くらいから、主にBtoBの企業に向けて、サイトやソーシャルメディアによる情報発信に関するサービスをスタートさせています。

そのころはまだ「インバウンド・マーケティング」という言葉はありませんでしたが、BtoB企業の多くは、顧客獲得の手段がテレホンアポイントとか展示会がメインでしたので、役立つのではないかというところからスタートさせたという経験があります。

だから、もっと個人が積極的に情報発信していった方が、会社も個人もメリットが大きいのです。

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