その土地の魅力や課題を真に理解したコピー、デザインを
だからといって、仕事の依頼が特別増えたかというと、あまり変化はありませんでした。あるとき、ローカルデザインで著名な高知県のデザイナー、梅原真さん(梅原デザイン事務所)の講演会が札幌で開かれました。
梅原さんの仕事の数々を収めた書籍『おまんのモノサシ持ちや!』を読んで以来、僕はすっかり梅原さんのファン。地域、人、モノとのまっすぐな向き合い方から一つひとつの言葉づかいのアウトプットまで、ほんとうに参考になります。
その講演会の場がきっかけで知り合ったのが、道東はオホーツク地方の小清水町にある農家「ファーム千葉」の奥さん、千葉洋子さんです。
僕が小清水町に近い北見市の出身で、さらに僕の奥さんの実家が小清水町出身ということもあり、やがて仕事を依頼いただくことになりました。
ここ数年、僕は札幌圏以外の仕事がしたいと言っていたので、オホーツク地方にゆかりがあること、梅原さんのファンだったことも重なり、まさにご縁でした。
依頼の内容は千葉さんのところでつくっている山わさびのラベルデザインを一新したいというもの。農家さん自らが、農作業の合間や冬の農閑期に封入作業もしなければならないので、以前から使っているPP袋と新ラベルを使うという前提がありました。
ラベルの色は、ごぼうのような茶色い側根の「土っぽさ」を損なわぬよう、白と黄緑を選択。
山わさびと言っても畑で育てているので、あまり「山の雰囲気」に寄らないよう、デザイナーの似鳥春瑠奈さん(デザインピークス)にデザインしてもらいつつ、地域のシンボルである斜里岳をシルエットに配置しました。
「これ、斜里岳なんだよ」と直接説明する時のコミュニケーションのネタとして活用しています。
ちなみに地元では、小清水町から見た斜里岳と、隣りの清里町から見た斜里岳でそれぞれ「こっちのほうがキレイ!」と主張し合う文化があるそうです。山梨と静岡の間で繰り広げられる富士山の話と同じですよね。
裏面のラベルでは、食べ方を指南しています。あつあつの白いご飯に、おろした山わさびとだし醤油の組み合わせが最強ですが、蕎麦や焼き肉などにもぴったりです。
また、リニューアルして販路が広がることを想定し、ネーミングもよりふさわしいものがないかと改めて検討。山わさびは、北海道 オホーツクが国内生産量の9割を占める特産品です。
しかし、山わさびそのものがまだまだマイナーなものですし、生鮮品として野菜売場で販売されているのもあまり見かけません。そこで、「山わさび」という、“あえてネーミングしないネーミング”でOKということで合意しました。
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