米カリフォルニア消費者連盟(Consumer Federation of California)は19日、スマートフォン向けハイヤー配車サービスUber(ウーバー)の上級副社長、エーミール・マイケル氏の解雇を要請したと発表した。
同連盟は声明で、マイケル氏が記者らを招いた会食の場で、ある女性記者をやり玉に挙げ、「Uberを悪く書く記者の汚点を探すために、100万ドルは使わねばならない」と発言したとしている。また、ウーバー・ニューヨークのジェネラル・マネージャーが、別の記者の乗車記録に不正アクセスした疑いについても触れている。
話題に上った女性記者は、Uberが10月にフランスで実施したプロモーションについて、「女性ドライバー蔑視を促し、犯罪を助長しかねない」と、自身が共同代表を務めるWebメディアの記事で非難していた。同プロモーションは、性的魅力を強調するような俗語表現とともに、「ドライバーと20分間無料でドライブが楽しめる」という企画で、プロモーションサイトからは、下着姿で肌を露出した女性の写真を載せたWebサイトへのリンクも張られていたという。
18日にはウーバーの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のトラビス・カラニック氏が、自身のTwitterアカウントを通じて弁明。14回に渡る投稿の最後で、女性記者のアカウント名を挙げて謝罪した。
役員の感情的な行動は経営リスク、二次災害も致命傷になりうる
<戦略的PRのコンサルタント 野呂エイシロウ氏の話>
どんな企業でも失敗はある。かといって、役員や社員が感情に任せて発言したり、行動したりすることはリスクでしかない。
実際、多くの米国企業は、役員やメディア対応をする社員にメディアトレーニングを義務づけている。少なくとも僕がコンサルティングした企業ではトレーニングを課していた。これは、リスクヘッジのためでもあるし、投資とも言える。PRはうまくすれば大きなリターンをもたらすからだ。
スマホ向けハイヤー配車サービスを手がける、米国ウーバー本社にはこうした意識がなかったのか、少し不思議に思う。いずれにしても彼らは、反射的だったにせよ、メディアと「敵」「味方」の関係になってしまったのがよくなかった。しかも、選んだ手段も最悪だった。
すでに欧米で複数メディアが、ウーバーが自社サービスを用い、記者の個人情報にアクセスした疑いを報じている。さらに、同社がユーザーの個人情報を悪用していないか、“余罪”の追求も始まってしまった。米ロイターは19日付で、サンフランシスコの作家が、同氏の個人情報が不正に公開されたとみられる件で、訴訟準備中だと伝えている。
「自社サービスで報復する企業」との評判は致命傷になりうる。ちょっと想像してみてほしい。もし、「欧米の飲食チェーンが、メディアにケチをつけられたため、記者に提供する料理にイタズラをした」というニュースが日本で流れたら。そして、その飲食店が日本にもあったら、一消費者としてどう行動するだろうか。
今回の件を知った日本の消費者は、少なくとも「自分がいつ、どの道を通り、どこからどこまで行ったか」という情報へアクセスされるリスクについて、思いを巡らせるだろう。
日本のウーバーも、急ぎコメントを出したほうがいいのではないだろうか。日本でのUber使用履歴の扱いや、海外での報道状況、再発防止のための指針など、伝えるべきことは多い。しかし21日現在、ウーバー日本支社のWebサイトには何も掲載されていない。
ハイヤーを気軽に使えるサービスを生んだウーバーの功績は大きい。僕も「大活用」しているし、12月は会食も増え、さらに利用機会が重なると想像していたところだ。それだけに今回のニュースは、とても残念だった。
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