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「歌舞伎フェイスパック」なぜ売れた? 「ジョジョの奇妙な冒険」仕様も新発売

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目指すは「日本の新しいお土産」 SNSやテレビで広がった理由

一心堂本舗は2011年に設立したばかり。江戸時代から続く「養生」という健康づくりのための思想を大切にしており、自然素材にこだわった菓子を調剤薬局で販売してきた。

そんな同社がフェイスパックを売り出すことになった転機は2013年4月、リニューアルオープンした歌舞伎座(東京・銀座)へ出店したこと。歌舞伎をモチーフとした土産用の菓子が好評だったことから、「食品に限らず、歌舞伎にちなんだ日本の新しいお土産を企画できないか」と考えていた折、戸村社長はインターネット上で「歌舞伎フェイスパック」の原型となるデザインと出会う。

それが東京ミッドタウン主催の若手クリエイター向けアワード(2008年)の入賞作「JAPANESE FACE」であり、作者は応募当時、学生だった小島梢さん。フェイスパックの製造ノウハウをまったく持たないゼロスタートながら、約6カ月というスピードで商品化に成功した。ちなみに小島さんは現在、広告会社に勤務するデザイナーで、一連のフェイスパック商品のデザインやパッケージ、宣材写真も手がけている。

商品開発にあたり戸村社長が最も危惧したのは、そのデザインのインパクトから「商品が一時的なブームで終わってしまうのではないか」ということ。そこで出てきたアイデアが、歌舞伎役者とのコラボレーションだ。市川染五郎さんに監修を依頼し、フェイスパックに施した隈取も、「本物」であることにこだわった。歌舞伎の人気演目「船弁慶」「暫(しばらく)」から採用したほか、パッケージの中面では日本語と英語で歌舞伎についての解説を盛り込んでいる。

このインパクトあるビジュアルはネットニュースやテレビ・雑誌で格好のネタとなり、さらにギフト需要の増加、SNS上での話題化も売上を後押しした。「隈取が素顔を隠してくれるため、普段はSNSで顔写真を公開していない人も“自撮り”を楽しんでくれていますね。中には初めてフェイスパックを体験したという、男性の写真もよく見かけます(笑)」(戸村社長)といい、ユニークで人に話したくなるコミュニケーションツールとして機能した点もヒットにつながったと言えるだろう。

さらにはタレントのブログでの紹介、バラエティ番組での実演などにも拡大。特にフィギュアスケート選手の間でブームとなり、高橋大輔選手のほか、ロシアのプルシェンコ選手なども使用中の写真を公開するなど、その影響力は海外にも広がっていった。

「話題化への投資は惜しまない」 フランスへの輸出もスタート

品質も国産にこだわり、価格は2包入り1セット900円(税込)としている。「競合ひしめく美容パックの市場だけに、他社から安価な類似商品がいつ登場してもおかしくない」と考え、他社との差別化要素となる「信頼感」の醸成を強く意識していった。「メディアに広告を出さない代わりに、広告費を商品開発に充てていきたい」といい、いわば“商品力でニュースをつくる”姿勢を貫いている。

海外でも「歌舞伎フェイスパック」の評価は高まっている。フランスの百貨店「ボンマルシェ」の日本展でもセレクトされ、9月にはフランスへの輸出を開始したばかり。アジア戦略ではインバウンド需要を重視しており、各国でのガイドブックへの広告出稿も準備中だ。

今後は「『日本を代表する顔』を世界に紹介するブランド」というコンセプトのもと、地方限定商品などの展開も視野に入れている。「日本の伝統文化を紹介するという会社のスタンスは守りながら、商品の種類と売上を増やしていければ」と戸村社長。2015年の販売計画によると大型商品の発売も続々と決まっており、いずれもメディアからの注目は必至と言えそうだ。