SNS時代の今、「口コミ」は認知・情報探索媒体として機能している

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清水聰 (慶應義塾大学 商学部教授)

態度決定から認知、情報探索媒体へ

口コミは英語では「Words of mouth」や「Buzz」と表現され、対人コミュニケーションから発生したものだ。そして口コミは、購買行動に影響を与える存在として、長らく企業の人たちも関心を持ってきた。

元来の口コミと言えば、自分が所属している集団の中でもイノベーティブな人や、特定の商品について知識が豊富な人の意見、というイメージを持たれていた。

例えば自動車を買う場合に、用途に合った車種がA、B、Cとあり、その人の個性に合うものはどれかというところまで聞くことができるので、商品選びで迷っている時に背中を押してくれる存在として機能してきた。こうした形の口コミは、自発的に発信されるものではなく、あくまで受け取る側が発信元に聞きに行かなければ得ることはできなかった。

一方でSNSなどの普及により、近年では自分と関わりがない組織や人によるSNS・ブログなどでの発信が、購買行動に影響を与えるようになっている。

従来型の口コミが消費者の購買行動プロセス「AIDMAモデル」でいうところの最後のA(Action)、つまりは行動段階に影響を与えていたのに対して、近年のそれはインターネットの普及による発信手法の変化に伴い、最初のA(Attention)、認知段階に影響を与えるものへと変わっている。

ブログや価格比較サイトのようなものは、購買行動プロセス「AISASモデル」における3番目のS(Search)、情報探索段階に影響を与えるものでもあり、現在の口コミは、認知媒体・情報検索媒体であると言える。

こうした変化に伴い、マーケティング活動においてますます口コミが重視されるようになっている。

その理由を分析すると、大きく2つある。ひとつは、SNS上での話題と商品の売上に関連性があることが見えてきたことがある。

ネット上で口コミを発信する層とその商品の主要ターゲットが重なる場合に、こうした関係性があることが分かってきた。

例えば、ネットで商品に関する口コミをするのは女子高生など若い層が多いのだが、実際にこうした層がメインターゲットとなるチョコレート菓子などでは、口コミ量と売上の間に強い関係が見えてくる。

一方で、こうしたケースがあることで、広告宣伝費をかけずとも口コミの活用によってコストをかけずに販売できるのではないかという期待が生まれているのも事実だ。そして、これが皮肉にも口コミがますます重視される2つ目の理由である。

しかし大前提として、商品に一定以上のクオリティがなければ、そもそも売れるはずはない。際立ったクオリティの差が見出せないような商品では、そもそも口コミが生まれないし、口コミを見て購入した人が満足して、さらなる口コミの拡散をしていくというプラスのスパイラルが生まれることもない。

影響力のある発信者の見分け方

口コミがマーケティングに生かせると分かり始めた当時は、どれだけブログに書かれたか、ツイッターで話題になったか、という「数」ばかりが重視されていた。そこから徐々に、書かれた内容まで重視されるようになってきたのが昨今だ。さらに内容だけでなく、「誰」が発信したかも重要だ。

以前はネット上の口コミというとブログが中心で、書くのに労力が必要なため、対象となる分野にそれなりに自信や含蓄のある人によるものが大部分を占めていた。

しかし最近は、SNSの普及で誰もが気軽に書き込むことが可能になり、口コミとして出回る情報の質が下がっている。

こうした環境では「誰」が発信したか、がより重要になる。マーケティングに効果のある口コミは、内容と、誰によるものかの吟味が必要となるのだ。

有効な口コミの発信者を見極めるには、以前はフォロワーの数で評価するケースが多かった。

しかし、その数の多さだけでは市場、トレンドへの理解という評価につながらず、役に立たないことが判明した。評価される発信内容は、対象となる商品の使い方や利用シーンを、発信者自らが考え、発展的に書かれていることだ。

こうした内容まで吟味した上での、口コミの数が商品の良し悪しを判定するバロメーターにもなっており、企業としてはこうした発信者を抽出し、さらにはフォローしておくことが重要となる。

商品の使い方を自ら考えて発信するような人たちは、有用な情報を発信することで、自らの存在意義を認めてもらいたいという気持ちが発信の動機になっている。

自身のイノベーティブ性に対する意識の高さや、自分が良いと思ったものが実際に売れていくことに対して喜びを感じることで、また次の発信につながっていく。

次ページ 「「適度な不一致」というギミック」に続く

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