SNS時代の今、「口コミ」は認知・情報探索媒体として機能している

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「適度な不一致」というギミック

口コミがマーケティングに生かせると分かり始めた当時は、どれだけブログに書かれたか、ツイッターで話題になったか、という「数」ばかりが重視されていた。そこから徐々に、書かれた内容まで重視されるようになってきたのが昨今だ。さらに内容だけでなく、「誰」が発信したかも重要だ。

以前はネット上の口コミというとブログが中心で、書くのに労力が必要なため、対象となる分野にそれなりに自信や含蓄のある人によるものが大部分を占めていた。

しかし最近は、SNSの普及で誰もが気軽に書き込むことが可能になり、口コミとして出回る情報の質が下がっている。

こうした環境では「誰」が発信したか、がより重要になる。マーケティングに効果のある口コミは、内容と、誰によるものかの吟味が必要となるのだ。

有効な口コミの発信者を見極めるには、以前はフォロワーの数で評価するケースが多かった。

しかし、その数の多さだけでは市場、トレンドへの理解という評価につながらず、役に立たないことが判明した。評価される発信内容は、対象となる商品の使い方や利用シーンを、発信者自らが考え、発展的に書かれていることだ。

こうした内容まで吟味した上での、口コミの数が商品の良し悪しを判定するバロメーターにもなっており、企業としてはこうした発信者を抽出し、さらにはフォローしておくことが重要となる。

商品の使い方を自ら考えて発信するような人たちは、有用な情報を発信することで、自らの存在意義を認めてもらいたいという気持ちが発信の動機になっている。

自身のイノベーティブ性に対する意識の高さや、自分が良いと思ったものが実際に売れていくことに対して喜びを感じることで、また次の発信につながっていく。

口コミをマーケティングに活用するにあたっては、新発売という情報や、テレビCMの内容がそのまま口コミになるようなものでは意味がない。

その商品に関するネタ、面白い情報を提供して、口コミが拡散するような仕掛けが必要となる。サントリー食品インターナショナルの飲料「オランジーナ」は、フランスで売られている瓶に似せたペットボトルを作って話題となったが、このように「通」と呼ばれるような人たちが飛びつく“ギミック”を提供できるかが鍵となる。

ギミックも、ただ「安い」といった価格の話や、あるいは話題化を狙いすぎて、その商品カテゴリーとあまりにかけ離れたものになってしまっては、関心を持ってもらえない。

花王の「ヘルシアコーヒー」のように、缶コーヒーという不健康そうなものと、特定保健用食品・ヘルシアを組み合わせることで、消費者が「なぜ?」と感じて興味を持つよう「適度な不一致」が重要となる。

こうした口コミにつながる一次情報の出し方を考えるのは、マーケティング部やそうした業務を担当する部署の仕事だ。

大事なことは、製品開発上のポイントや、開発者の思いを伝えること。商品の物理的な価値を、思いと関連させて情緒的な価値につなげられるかどうかが重要である。

前述のように「オランジーナ」は、瓶を模したペットボトルをつくったが、「瓶にある気泡をペットボトルでも再現した」という事実が大事なのではなく、そこに加えて「昔ながらの手づくり感」の記号として気泡が機能し、さらにそこから古き良きフランスの街並みなどへとイメージが飛躍できるようなメッセージ開発が秀逸だったと言える。

テレビCMなど、大々的な広告が打てない中小企業などの場合には、自社の発信ができる場は、自社サイトなどに限定されるだろう。こうした場合でも、ギミックの活用は可能だ。

例えば、NHKの『プロフェッショナル』や『プロジェクトX』が支持を得ているように、目標に向かって人が一生懸命に努力する姿は、それだけで人の心を動かすものだ。

こうした努力や思いを分かりやすい言葉やメッセージにすることが、マーケティングの役割でもある。

口コミにおいても、そうしたことが感動的に伝わっていくようにすることが大事であり、これは企業の規模を問わずできることだ。その商品がどのようにつくられたのか、そのストーリーをサイトで伝えることで、口コミを拡散させることができる。

口コミで成功している企業の事例などを参考に、口コミ発信者に伝わる、見てもらえるようなサイトをつくることは重要である。

かつて、テレビが情報発信の主戦場だった時代には、資金力のある大手に中小規模の企業は手も足も出なかった。

しかし、ネットが浸透し、Webサイトからの発信ができるようになった今は、中小企業にもチャンスが増えている。地方の造り酒屋がサイトを活用し、全国に販売を広げているような例もあり、良いものであればうまく情報を出すことによって口コミで広めることができる。

企業規模に関わらず、情報発信次第で、売上を伸ばす可能性があるのであれば、利用しない手はない。

「ハーゲンダッツ」型と「ガリガリ君」型

企業の思いやエピソードなど、感動が拡散する口コミがある一方で、ただ「面白い」という理由で口コミにつながるケースもある。

赤城乳業の「ガリガリ君」がその代表例だ。同じカテゴリー商品で比較すると、「ハーゲンダッツ」は、アイスクリームのおいしさが実際に食べた消費者の心を動かして「おいしかった」という口コミが発生する。

一方で「ガリガリ君」の場合は、例えばリッチ コーンポタージュ味が発売されると「面白い」という消費者の感想が先にあり、その口コミを書きたいから購入するという、通常とは逆の順序となる。最初から口コミによる拡散効果を狙った商品開発を行っているのだ。

従来の口コミマーケティングは、ハーゲンダッツ型の、真面目なものづくりで、その結果「おいしい」といった感想、感動を伝えようというタイプが主流だった。最近はそれだけではなく、「ガリガリ君」のような話題から入るタイプのものも増えている。

口コミマーケティングを考えた場合、この2タイプは、各企業のブランド価値の置き方によって使い分けられるようになるだろう。

「ハーゲンダッツ」型は、商品の価値が本質的であればあるほど、ひとつの口コミが長く続き、信頼性のあるブランドとしての価値を高めることができる。

「ガリガリ君」型は、瞬間的に口コミはえるものの、1回の口コミの期間が短く、継続して話題をつくり続ける必要があり、体力が求められる。ただ知名度の低い企業がひとつステージを上げるきっかけにするという意味では、有効な方法である。

「ガリガリ君」自体も、瞬間的な口コミ増加で認知度を上げる、という施策を繰り返すことで、独自のブランド価値を創出することに成功している。

デバイス多様化がもたらす変化

ネット時代の口コミの初期は、パソコンが主な発信元で、消費から書き込みまでのタイムラグがあった。

スマートフォンが普及した現在は、消費したその場から発信することが可能だ。ブログにしてもTwitterにしても、いま起こったことが、すぐに投稿されるため、リアルタイムに情報が発信される。消費者のダイレクトな感情や感想が、加工されずに現れ、広がっていく点で、企業にとっては怖い存在にもなっている。

同じSNSでも、FacebookやLINEは匿名性が低く、ブログやTwitterに比べて、発信者に対して受け手が親近感を覚えやすい。その分、情報の質は高く、影響力が大きいという旧来の口コミに近い性質を持つため、分けて考える必要がある。

これからは、どの媒体で口コミがされているのか、消費者の意思決定のどの段階に影響を与えるのかという分析が重要だ。

また、比較サイトの口コミ、特にクレームなどへの対応は即時性が拡散の抑止にもつながるため、デバイスや媒体に応じた対策を立てることが、口コミマーケティングを進めていく上では必須となると言える。

次ページ 「CASE STUDY 口コミ活用の実例」に続く

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