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「好きなのにやめてしまう」人が6割~博報堂が習慣行動と意識の関係を調査 ――博報堂行動デザイン研究所

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博報堂行動デザイン研究所(生活者の新しい行動習慣をデザインすることをミッションとした博報堂の専門組織)が、生活者の「習慣行動」のモデル化を通じてその行動を促進する打ち手を明らかにすることを目的としたリサーチを行った。(協力:東京大学渡邊克巳准教授)。それによると、習慣的な消費行動と意識の関係性に関してこれまでの広告コミュニケーションの常識を大きく覆す結果が分かったという。調査内容とそこから見えてきた今後のマーケティングのポイントについて、博報堂行動デザイン研究所所長 國田圭作氏に聞いた。

改めて確認された事実。好意形成だけでは行動に結びつかない

博報堂行動デザイン研究所所長 國田圭作氏

博報堂行動デザイン研究所所長 國田圭作氏

企業の広告マーケティング活動は伝統的に「認知」→「好意」→「行動(購買)」という3ステップ・モデルで運用されてきました。しかし昨今の実務の中では最後の「行動」(購入やサービス利用)が最も本質的な指標として重視されるようになってきています。

今回の調査は、「認知」「好意」という意識レベルでの変化を起こすことが、本当に目標とする「行動」にまでつながるのか、を検証する当研究所の取組みの一環として行ったものですが、今回の調査で一つショッキングな結果は、商品やサービスを「好きだけどやめてしまう」人が6割もいるということでした。

つまり、「好き」という意識は、必ずしも購買などの行動とリンクしていないということなのです。

詳細に踏み込む前に調査内容について簡単に紹介します。今回、調査前に私共が初期仮説として立てた「習慣行動のモデル」(図①参照)を基に、「習い事」「コーヒー」「ノンシリコンシャンプー」という3つのカテゴリーにおいて、学習期、安定期、離脱期の各ステージに投入されるリソース(時間、お金など)がどう変化するか、また、それぞれの期間で行動や意識がどのように変化するのかについて調査していきました。

この3つのカテゴリーを選んだのは、あまり類似性のないカテゴリー間で共通の傾向があればそれを一般解と考えられる可能性が高いからです。

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先ほどの「好きだけどやめてしまう」というのは、図の「離脱期」の人に対象への好意度を聞いたところ「とても好き」「やや好き」と回答した人が、習い事とシャンプーでは6割を超えていた(コーヒーでも5割弱)ということ。

つまり「好意」を高めるだけでは離脱を半分しか防止することはできないかもしれないのです。考えてみれば当たり前ですが既存客の中には「好きだけど目的は果たした」という人もいれば「好きだけど飽きた」「好きだけど他にもっと気になる対象が見つかった」という人も多く存在しているからです。

逆に、好意が下がると習慣行動がどうなるのかについて調べると「学習期」と「安定期」では、「愛着を感じる」というスコアが大きく異なっていました。

習い事に関しては、学習期22.1%→安定期10.6%と愛着が半減。コーヒーについては学習期6.0%→安定期1.7%と大きく減っています。

つまり私共が当初「安定期」と呼んでいたステージは、実は愛着が減っているのに行動は惰性で続いている、という時期であることが明らかになったのです。

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このように、「好きだけどやめてしまう」場合もあれば「もはやそんなに好きではないけれど続けてしまう」場合もある。従って「好意」は行動と必ずしもリンクしないといえます。

この結果を踏まえると、好意をどうつくるか、維持するかにばかり注力するのではなく、ダイレクトに行動を拡大・維持する手段を考え・実践したほうがよいと言えます。

もちろん、これは「認知向上、好意形成を目的とした広告活動が不要」という意味ではありません。新商品や新サービスが登場したときにはまず認知、理解、そして好意を高めていく施策は必要です。

ただ、既存のカテゴリー/商品をある程度習慣的に購入・使用している状況においては、行動習慣につながる施策をもっと視野に入れて取り組んだ方が効果的ではないかということなのです。

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