「文章を書く人」という目標には近づいたものの、雑誌編集という仕事は、当時の僕にとって「楽しいけれど、なんとなく手応えがない」ものでした。
というのも、編集長に怒鳴られたり、先輩の立ち話に朝まで付き合わされたり、取材中に樹海で遭難しかけたり、二日酔いで取材車の中で吐いた後輩の面倒を見たりしながらつくった誌面に対して、得られる反応といえばほぼ読者からのアンケートハガキだけだったのです。
月ごとの販売部数を見ても、どうも雑誌の出来不出来とは無関係のような気がして、なんとなく消化不良な日々が続いていました。
そんななかで、僕がやりがいを見出したのは、いわゆる「タイアップ記事」の制作でした。
タイアップ記事というのは、カンタンに言うと「記事のフリをした広告」のこと。その裏にはクライアントがいて、僕たちはあーでもないこーでもないというご意見を頂戴しながら、クライアントの意向に沿った記事をつくり上げていくわけです。
それが、すごくおもしろかった。
自分のつくったものに対して、良くも悪くもダイレクトな反応が得られる。怖いことでもあるのですが、若い僕は「モノづくりの醍醐味」みたいなものをビビビッと感じちゃったんですね。
もっといい広告をつくりたい!もっとたくさんの媒体に挑戦したい!!もっといろんなクライアントと仕事がしたい!!!
そうして僕は、編集という経験を生かしながら広告制作に携わることができる、今の職場へと移ったのです。
20代最後の年。
ヒッピーという夢を捨てて。
藤倉 郁浩(ふじくら いくひろ)
株式会社グラフィック 東京支店 東京デザイン課所属。ディレクター、コピーライター。
北海道札幌市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、出版社勤務を経て現職。主な受賞歴は、第51回宣伝会議賞 シルバー、第52回宣伝会議賞 協賛企業賞、第5回販促会議企画コンペティション ファイナリスト他。2013年宣伝会議コピーライター養成講座上級コース修了。好物はビールと魚介類。
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いまでも多くの有名クリエイターを輩出している本講座。幾度かの改変を経て、内容を一新。コピーやCMといった、広告クリエイティブだけでなく、インタラクティブ領域のコミュニケーション、マーケティングやメディアクリエイティブなど、さまざまな視点からコミュニケーションを構築する能力を養い、次世代のクリエイターを育てます。
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