新しくなくていい。珍しいことを考えよう。
目立つためには、「新しくなくていい。珍しいことを考えたらいいんや」、ということもよく言われました。
多くの人が理解できない「最先端のこと」や、すでに誰かが手をつけている中途半端な「新しいこと」を追いかけるよりも、多くの人が理解できる「珍しいこと」を考えて目立とう、ということです。
普通の人が暮らしている日常を舞台にして、人がまだやってない「珍しいこと」をやる。そのほうがわかりやすいし、多くの人の気もちに深く届きやすいんじゃないでしょうか。「みんながわかるマイナー」は目立てるし、メジャーになれると思います。
もちろん、新しいことを見つけたり、考えるのが得意な人は、その世界をめざすのがいいと思いますし、目立つためには他にもいろんな方法があると思いますが、みんなに受けそうな「珍しいこと」を、いひひと笑いながら考える時間は楽しいですよ。そういう時、僕は自分の中にある常識の部分と非常識の部分とを行ったり来たりしつつ、考えてるんだと思います。
目立つ企画をつくる、その前に。
目立つ企画をつくるためには目的を明確にしなければなりません。
伝えたいことを正しくひとつに絞らなければなりません。
そこを欲ばったり、迷ってしまったら、ほぼ必ず失敗してしまいます。あれも言いたい、これも言いたいなどとたくさんの荷物を背負ってしまったら、ゴールまでその荷物を落とさないようにするだけで精一杯。途中で景色を見たり、楽しいことを考える余裕なんてなくなってしまいますもんね。
目的を絞るということは当たり前のように聞こえますが、商品や企業の課題を見つけて、目的を定めることはとても難しいことです。
たとえば、僕がずっと担当してきた「ケンミンの焼ビーフン」の場合で言うと、「ビーフンっておいしいんですよ」とか、「米の粉からできた麺です」とか、「簡単につくれます」とか、「野菜をたっぷり入れられるからヘルシーです」などと、ケンミン食品さんがアピールしたいことはたくさんあるわけです。
ケンミン食品さんに初めてのプレゼンをしたのは1985年のことでしたが、そのとき僕たちは、「ケンミンの焼ビーフンの知名度を上げましょう!」ということを唯一の目的にして企画をつくり、提案しました。その当時、ケンミン食品さんの知名度はまだ高くありませんでしたし、焼ビーフンという食べ物自体を知らない人も多くいたからです。知らない会社の、知らない食べ物を食べたいと思うはずがありませんよね。
だから、まずはとにかく、「ケンミンの焼ビーフンという食べ物を知ってもらうことに目的を絞りましょう」、「ケンミンの焼ビーフンを世の中にデビューさせ、興味をもってもらいましょう」、というプレゼンをしたんです。
知名度を上げることを目的にしたのですから、CMの主役は「商品名」です。いちばん初めにつくったCMでは商品名を徹底的に連呼しましたし、その後も商品名を真ん中に置いたCMをつくり続けてきました。オンエア回数は少なかったので、商品を覚えてもらうためには一度見ただけで印象に残る目立つCM、珍しいCMにする必要もありました。
おかげさまで商品の売り上げは伸び、あれからほぼ30年、ずっと担当させていただいています。
テレビは見られなくなった、テレビCMは効果がない、というような話を最近よく耳にしますが、ちゃんと目的を定めて、目立つCMをつくれば効果があります。そういうCMは、SNSなどでも拡散していく力を持っています。というような話をするとさらに長くなるので、また別の機会に書かせていただきます。
と、今回はずいぶん長くなってしまいました。
そろそろおしまいにしようと思いますが、下記ホームページで「ケンミンの焼ビーフン」の最新CMをご覧いただけます。もしよろしければ、覗いてみてください。オンエアされていない60秒バージョンもあります。(※キャベツラグビー篇は僕たちの仕事ではありません)。
ということで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回は、「商品をほめたら、あかん」という話を書く予定です。
「右手に常識、左手に非常識。――関西「広告」クリエイティブの源泉 」バックナンバー
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