現役記者もリアリティに太鼓判
より詳しい情報を引き出そうとするマスコミと、距離を取りながらうまく付き合い、あわよくばコントロールしようとする警察。その矢面に立つ広報室は、記者らの要求に対し強硬に突っぱねるときもあれば、記者クラブや飲みの席で懐柔に動いたりもする。
なお、D県警広報室のメンバーは三上を含めて4人。記者とのパイプ役である諏訪(新井浩文)、真面目さが取り柄の蔵前(永岡卓也)、そして紅一点の若手である美雲(山本美月)。広報は女性が活躍する仕事でもあり、若い担当者も多いが、作中では若手の女性広報の役割や立ち位置の難しさを考えさせられる場面もある。
さらには刑事部と警務部の全面戦争など、広報担当者が陥りがちな組織内での“板挟み”状態を追体験できる作品でもある。組織の力学が働く一方、その組織を構成する個々人の思いが反映され、事態はときに思わぬ方向に展開する。緊張感ある場面が続くため、同様の悩みを抱える広報担当者は感情移入するあまり、気が休まらないかもしれない。それでも観るべき価値のある作品と言って良いだろう。
ある全国紙の記者は「特に、社会部の記者との付き合いがない広報担当者にこそ観てほしい」と太鼓判を押す。なぜなら、彼らは『64』が描き出す世界が本物であることを認めているからだ。記者生活を経て作家となった横山秀夫さんが「広報とマスコミはどこまで行っても平行線にしかならない、という問題が存在する。この事実を提示したかった」「この種の問題でマスコミが言うであろう台詞はすべて書き尽くした」と言い切っているのだから、そのリアリティに間違いはないだろう。
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