連載のむすびとして
今日、食の多様化は進む一方であり単なる「新しさ」「美味しさ」「簡便さ」だけでは、商品や売り場の差異化がしきれない。これまで以上に、喫食シーンや、調理時のベネフィットを明確にしないと生活者に響かない状況になっているのだ。
例えば、クックパッドで最も検索されている単語は「簡単」であり、調理の基本ニーズがそこにあることは間違いない。しかし簡単は「手抜き」を想起させる言葉でもあるため、「コツ」「工夫」を想起させるようなポジティブなアイデアの提案が重要となる。ロールキャベツを簡単に作るための「巻かない」は以前から一定の検索が行われていたが、テレビCMなどにより更に検索頻度が高まっている。また、唐揚げや春巻きに対する「揚げない」や、ローストビーフに対する「フライパン」といった組み合わせ検索語はいずれも「簡単」を具体的な工程に落とし込んだキーワードだ。このように一つひとつのキーワードをどれだけ具体化ができるかがMD提案のカギとなる。
「たべみる」で見られる検索キーワードは、従来は観測することができなかった食に対する「コト」を生活者自身の言葉で把握することができるサービスだ。
検索データのような“ビッグデータ”の活用は、従来のKKD(経験、勘、度胸)からの脱却という言われ方をすることが少なくない。しかし、こういったデータの活用はKKDを否定するものではなく、補完するものだと考えている。なぜなら、データをひも解くことは擬似的に経験を積むことであり、勘(仮説)の精度を高め、実行するための度胸(関係者への自信の伝播)を強化するものだからだ。データは生活者の背中を押すヒントというだけでなく、あなた自身の組織のメンバーも後押しするきっかけにもなるだろう。
中村耕史(クックパッド トレンド調査ラボ 調査室長)
大手市場調査/システム会社にて、リサーチ・コンサルティングサービスを提供。クックパッドに入社後、事業部門での社内アンケートシステムのリプレイスや施策の効果測定業務を経て、経営管理部にてデータ可視化・活用の推進を担当。
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