メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

高速バスの運営ノウハウをローカル鉄道へ、ウィラーが挑む地域創生

share

リアルメディアでの魅力発信と鉄道移動を促す企画乗車券をセットで提供

——今回の鉄道事業の構想ついて、「交通革命とまちづくりが連携することで、地域の価値を向上する」とおっしゃっていました。これに向けて、鉄道事業活性化のためのコミュニケーション施策について教えてください。

顧客には、丹鉄の沿線に住んでいる「域内」の方という軸と、沿線ではない「域外」の方という二つの軸がありますので、それぞれについて何をすべきかの整理がまず必要です。そのうえで、最終的には、高速バスの予約システムにインターネットを取り入れて効率化したように、鉄道においてもインターネットを活用して情報を発信し、特にスマートフォンにおいてさまざまな情報が見やすいように集約していこうと考えています。

ただ、現実的には、域外から来る方にはITは有効ですが、域内の方は、住んでいる方々の年齢層のことなどもあり、インターネットの活用度合いが高いとは言えないところがあります。そうなると、地元の新聞や自治体が発行する家庭に配る広報誌といった紙メディア、地域のケーブルテレビなどを活用する必要があります。

それらのメディアに、沿線の市や町で行われている祭などのイベントや、「この時期は〇〇の花が見ごろですよ」といった情報を掲出し、新しい丹鉄の利用提案を行っていくことが基本的なコミュニケーション施策です。

ただ、イベント情報を掲載するだけでは人は動きません。同時に、鉄道で移動しやすくなる仕組みが必要です。そこで、イベントに合わせた「企画乗車券」を販売しています。地方鉄道だと、初乗り料金が意外と高いところも多く、家族全員で乗ると移動コストがかかってしまいます。そこで、1日乗車券のように、距離に関係なく乗り降り自由な券をイベントに合わせて発行し、経済的な負担を小さくして鉄道で移動しやすくしています。

週末のお出かけやイベントに合わせた各種企画乗車券を販売。ウェブ上で予約する方が、駅で購入するより価格が安い。

例えば、「週末ファミリーパス」(大人2名と小児2名の最大4名までが、土、日、祝限定で丹鉄全線乗り放題)や、「55&キッズ全線パス」(55歳以上の人1名と、同行する小児2名までが、丹鉄全線乗り放題)などがそれにあたります。

このように、「地域に根差したメディアへの情報発信 ⇒企画乗車券の発売 ⇒企画に参加した人の声をメディアに反映」、というサイクルを回すことによって、まず域内の方々の広域交流を増やしていきたいと考えています。

それを積み重ねて、域内の方の「毎週末、丹鉄に乗るとどこかのレジャー・イベントに行けて、楽しい体験ができる」という認識を高めていきます。私は、人が商品購入やサービスを利用するうえで、想起率が非常に重要だと思っています。子どもから「どこか行きたい」と言われたり、遠方から親戚が来たりしたときに、「丹鉄の企画乗車券、次はなんだっけ?」と思い立って、すぐに我々の情報を見てもらえるくらいになる必要があります。

まずは、シニア、小さなお子さんがいるファミリー層に向けてメディアに情報を出し、認識が高まってきたら、一度ご利用いただいたお客さまのリピート促進に本格的に取り組みたいと考えています。

——域外の方は、観光列車などをネットで予約・購入するのでメールアドレスが取得でき、リピート促進が容易です。一方で、域内の方々は基本的に駅で直接乗車券を購入するので、リピート促進を直接行うことが難しいのではないでしょうか?

ご指摘の通りです。だから、まずはウェブよりリアルのメディアで情報を出して、想起率を上げることが優先なのです。その後、徐々にウェブに移行して会員化していき、メールマガジンなどで毎週告知ができるようにしたいと考えています。

それに向けて、実はすでにウェブ上で企画乗車券を購入できる仕組みを整えています。さらに、ネットでの価格を駅で直接購入するより安く設定してあるので、ネットでの購入が促され、こちらから直接情報を送れる人の母数は増えています。

実際、ウェブで企画乗車券を予約して、現場で引き換えるという仕組みは、4月だけで230万円以上の売上げとなりました。

こうしてリアルのコミュニケーションを連携させて想起率を高めつつ、予約はウェブの方が簡単で安いと思ってもらうことで、今後のイベントや企画乗車券の情報はウェブの方が探しやすいということを、域内の一人ひとりに浸透させていく計画です。

——では、域外からの観光客誘致におけるコミュニケーション施策はどうでしょうか。

丹鉄のFacebookページ。域外からの集客には、WEB、SNSを活用する。

域外からいらっしゃる方に向けてのコミュニケーションはWEBが起点です。自社サイトに加え、Twitter、Facebookなどのソーシャルメディアで、価値の高い情報を拡散していくのが基本的な戦略です。その際、当たり前ですが、発信する情報の価値が高いことと、それを受け取るターゲットをしっかり設定し、マッチさせることが重要です。最近は、国内だけでなく、海外からの観光客も意識する必要があると思っています。

近隣で言えば、立山にはたくさんの外国人観光客が来ています。その理由は、やはりインターネットで口コミが広まったから。それだけネット活用、SNS活用で口コミ広まることの効果が大きいということです。幸い、京都にはたくさんの外国人観光客がいらっしゃるので、この方々に、北上した京都には、日本情緒のある風景があることをしっかり伝えていきたいですね。

次ページ 「高速バスと鉄道を結ぶためには交通機関の連携が必要」へ続く