ユーザーが求める「クオリティ」の本質
——動画のビジネスは、まだ事業化が難しいのでは。
起業する前から動画のビジネスは難しいだろうと思っていました。実際に始めてみて、
ユーザー側ではモバイルのパケット代の問題がありますし、クライアントに対しては広告効果の設定の問題があります。ネットメディアの広告は、これまでの経緯から即時的な効果を求められがちで、動画を活用した、新しいプラットフォームの活用方法や効果をどう理解してもらうかが今後の課題だと思っています。
加えて、映像の世界は職人的なこだわりを持つ人が多いな、と実感しています。ただ、動画が視聴される環境は劇的に変わってきているので今、ユーザーが動画に求める「クオリティ」の本質を見誤らないようにしたいですね。
たとえばフレンチレストランに期待する「価値」とファストフードに期待する「価値」が違うのは当然のこと。ファストフードの店が、フレンチレストラン同様に、1時間かけて丁寧に調理したハンバーガーを提供してくれても、誰も喜びません。しかし動画の世界では、これと同様のことが起きてくるのではないかと思います。
クリエイターの方はときにユーザーが求める価値とは異なるクオリティを職人的に追求してしまうことがあります。しかし、たとえばゲーム業界の歴史を見てもコンソールゲームの質にこだわっていたクリエイターは、ソーシャルゲームが登場した際に、その変化についていけなかった。最後は、時代に選ばれるかどうか。自分たちが追求するクオリティが、真にユーザーにとっての価値になっているのかは、常に検証していく必要があります。
お客さま目線で商品の魅力を伝える
——8月からの出稿が決まったクライアントは、森川社長が直接営業したと聞きます。
「C CHANNEL」では動画の配信だけでなく、クリッパーが動画制作も行います。その動画を企業のオウンドメディアにも提供しているので、クライアントの方々には「動画のオウンドメディアを支援するプラットフォーム」と説明してきました。
出稿したクライアントには、「C CHANNEL」内にチャンネルを持っていただき、そこで週に1本の動画を配信していきます。例えば、ローソンさんではクリッパーが実際にローソンの商品を試した動画を制作・配信の予定です。
これまでナショナルクライアントの動画活用は、どちらかと言えば話題拡散を狙うケースが多かったように思います。その点、「C CHANNEL」は話題性よりも、きちんと商品を説明し、共感してもらえることを目指しています。上から目線のメッセージや、クリエイティブの力でごまかした広告ではなく、お客さまと同じ目線から商品を見た率直な感想こそ、今の時代に共感されるものと思います。
C CHANNELのCはCommunicationのC。従来型の広告メディアの考え方ではなく、お客さまと企業をつなぐ新しいプラットフォームをクライアントに提供したいというのが、いま考えていることです。
「森川 亮さん」に関連する記事はこちら
森川 亮(もりかわ・あきら)
1989年筑波大学卒業後、日本テレビ放送網、ソニーを経て2003年にハンゲーム・ジャパン(のちのNHN JAPAN、現・LINE)入社。2007年より同社、代表取締社長に就任。2015年3月にLINE代表取締役社長を退任。同年4月、C CHANNELを設立、代表取締役社長に就任。近著は『シンプルに考える』(ダイヤモンド社刊)。
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