「次世代マーケティングとカスタマー・エクスペリエンス」
講演者
- ビービット 代表取締役 遠藤 直紀 氏
かつては「パーチェスファネル」として捉えられていたカスタマーエクスペリエンスは、いまでは「カスタマージャーニー」へと変化し、フラグメンテーション(断片化)が加速するターゲットユーザーの行動は、企業にとって、ますます見えづらいものになってきている。
マス広告・プロモーションを展開し、新規顧客を大量に獲得することが第一義とされていた時代から、既存顧客との長期的な関係性を構築・強化していくことが重視される時代へ。その変化の中で、デジタルが担ってきた役割は、①ニーズが顕在化した新規顧客を獲得する、②ニーズが潜在的な見込み顧客にアプローチし顧客化していく(リードジェネレーション、リードナーチャリング)、の大きく2つに分けられる。
ビービット 代表取締役の遠藤直紀氏は、これからの時代において、より伸びしろが大きいのは②で、さらに既存顧客を優良顧客化していくことだと指摘。そして、その実現のためには「自社がどうあるべきか、顧客視点で捉える新しい視座が必要となります」と話す。
インターネットが普及し、ソーシャルメディアなどでの情報発信も容易になった現代では、既存顧客との関係性を深めることで、例えば既存顧客を起点に口コミが広がることが、新規顧客獲得のきっかけになり得る。関係性の深い顧客はリピート率や客単価が高いだけでなく、信頼関係を基盤としてサポートコストも下がることがわかっている。フォレスターリサーチ社も現代を「カスタマーエクスペリエンスの時代」と定義し、顧客の経験価値を高めていくことで、マーケティングの成果をより向上できるというデータを発表している。実際、米国ではカスタマーエクスペリエンスを高めるためにデジタルを活用する企業が増えていることに触れ、遠藤氏は「デジタルを使って顧客の体験価値を高めることが、次世代のマーケティングには不可欠の視点なのではないか」と話す。
「顧客視点」という視座の獲得と、デジタルの効果的な活用のために期待されているのが、カスタマージャーニーを可視化した「カスタマージャーニーマップ」だ。遠藤氏はカスタマージャーニーマップをつくるための必須条件として、①目的設定を明確にする、②顧客視点で企業活動を評価する、③課題を構造化する、④ビジネスとの相関関係を明確にする、の4つを挙げる。カスタマージャーニーの分析を通じて顧客行動と自社との接点を洗い出し、それぞれの場面の心理を分析することは、顧客視点から自社の在り方を見直すことにほかならない。
有用なカスタマージャーニーマップを作成し、それに基づいて顧客視点の施策を企画・実行していくのは、デジタルマーケティング担当者の重要な役割だ。「Web上での行動履歴や、企業に対する評価を含む、膨大な量の顧客データを保有し、そのデータを元に仮説・検証を繰り返しながらマーケティング戦略を策定する知見を持つ人材は、これからのビジネスをリードしていく立場にある」と遠藤氏は指摘する。
顧客視点で価値を提供すると、顧客からの信頼を得ることができ、長期的な利益にもつながる。顧客満足度が上がれば、それが働く人のやりがいにも好影響をもたらす。顧客視点を持つことは、経営にも良い循環を生み出すのだ。遠藤氏は、「お客さまの笑顔を中核に、あらゆるステークホルダーがハッピーになる。カスタマージャーニーマップに基づいた顧客視点のデジタルマーケティングを進めることで、それを実現できるのではないでしょうか。顧客理解のためのアプリ開発・設計などを通じて、当社もそれに貢献していけたら」と結んだ。
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