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コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

2限目「先生!PRの文章はどういう風に書けばいいですか?」「前向きすぎるPRはいやらしいですか?」

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ニュースリリースから記事が書けない!?

6月の新入生の研修合宿は出羽三山にある宿坊を借りて行われた。

確かに、PRの文章は「ポジティブに書く」は間違ってはいない。学生が就活などで自分を紹介する文章や自己PRも同じだろう。しかし、あまり「ポジティブ」で「前向き」すぎるのは、それはそれで「イヤミ」であり「信頼できない」のではないだろうか。この辺りの加減が実際には難しい。

宣伝会議「戦略PR講座」の講師陣で、昨年、鼎談を行った時の中川淳一郎さんの言葉を思い出した。

中川:その問題でいうと、オレ、最近はプレスリリースから記事を書けなくなっちゃったんですよ。リリースをもとに書くと、ネットで見た読者から「リリースだけ見て書いてるのかよコノヤロー!」「リリース程度の情報だったら俺だって見れるんだよ!」と言われるから。ニュースの運営側がステマに加担してると思われるのを極端に恐れていて、自主規制しちゃう。

出典:片岡英彦×山田まさる×中川淳一郎「戦略PRはどこへ行く?」(2)ニュースリリースから記事が書けない!

 

企業が自分たちで自由に情報を発信できる時代になり、プレスリリースと自社コンテンツとの境界線が曖昧になった。プレスリリースよりも先に自社サイトで顧客向けに情報を公開することは今では珍しくない。内容的にもほとんど差がない場合がある。

中川淳一郎さんのコメント中の「ニュースの運営側がステマ(ステルスマーケティング)に加担してると思われるのを極端に恐れ…」はこの点に起因する。

「前向き」すぎる自己PR(プレスリリース)はいやらしいのか??

編集者や報道記者は、企業のプレスリリースを情報源にして、新商品の情報などを読者や視聴者に伝える。(もちろん独自取材の情報を追加することが多い。)

かつて「組み日(組日)」と呼ばれる広報業界独特のルールがあった。「◯日組、翌日出し(掲載)」という用語がよく用いられ、企業からのリリースは、原則、情報開示の翌日(朝刊発行時)となりリードタイムが設けられていた。官庁クラブなどでは今でもこうしたリードタイムに関する独自ルールがある。

ところが今では企業が生活者に情報を直接提供し始めた結果、今こうした企業自体が「メディア企業」になろうとしている。

そして生活者は、メディアが発信する客観的な報道やエンタメコンテンツに興味を示すが、企業が発信する販促情報など「手前味噌」なコンテンツにはあまり興味を示さない。この課題を解決するため、企業は自社が発するコンテンツのエンタメ性(広義の)が重要となった。日本でも「コンテンツ・マーケティング」の手法が普及してきた。

「コンテンツ・マーケティング」の「コンテンツ」とメディアが流す「コンテンツ」は何が違うのですか?

メディアは自分たちが発信するコンテンツを、より多くの人びとに視聴・購読してもらいたいと考える。それにふさわしいコンテンツ(視聴率を稼ぐコンテンツ)を制作する。

一方「コンテンツ・マーケティング」のコンテンツは、最終的に企業が自社の商品を購入してもらう(あるいは顧客ロイヤリティを高める)ためのコンテンツ(売るためのコンテンツ)となる。

メディアは「何人が接触するか」のリーチにこだわる。コンテンツ・マーケティングでは「結果としてどう反応したか」(買ったか買わなかったか)の顧客行動の変化や態度変容を強く意識する。

同じ「コンテンツ」でも制作の「目的」がそもそも異なる。

次ページ 「先生!結局…PRの文章には何を書いたらいいのですか?」へ続く