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コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

2限目「先生!PRの文章はどういう風に書けばいいですか?」「前向きすぎるPRはいやらしいですか?」

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先生!結局…PRの文章には何を書いたらいいのですか?

そうそう、思わず話が脱線していた。

誰だって普通は自分(自社)の「良い所」を一生懸命にアピールしたくなる。だが、アピールすればするほど「手前味噌」に思われる。「信憑性」に疑問を持たれることさえある。最近ではリリース直後にベンチマーク(比較検証)の動画がアップされる。レビューサイトへの投稿が多く書き込まれる。様々な他の意見(アナザーオピニオン/オポジットオピニオン)が目に触れる。

新入生の研修合宿でのプレゼンテーションの様子。

小手先のPRの文章や表現テクニック(美辞麗句)は通用しなくなってきた。

これは就活などの自己PRでも同じだ。「盛った」PRをしてもすぐにメッキは剥がれてしまう。PRの文章を書く際には、PRとかマーケティングという発想を、一度捨てるとよい。

けっこう難しいです…

長いことマーケティングでは、狙い、ターゲット、囲い込み…などという「ハンティング(獲物を狙う)」という言葉が多く使われてきたが、これを「愛される」「頼られる」「信頼される」「選ばれる」など、もう少し「恋愛」にも近い言葉で置き換えてみたらどうだろう。

「商品スペック」の告知ではなく、「どういう不便(ストレス)を解決したいという思いがその商品を誕生させたのか」「どんな苦労をして開発に辿り着いたのか」「この商品を買うのと買わないとではどんな違った新しい物語が生まれるのか」などを、「自社なりの視点」「この製品でしか解決できない課題」「他の人にはマネできない物語」といった「思い」を軸に真摯に伝える(レポートする)ことが、これからPRの文章を書くときには大切になる。

PR担当者というよりもジャーナリスト??

扱う商材(時に自社や自分自身に対して)を客観的なジャーナリズムの視点で観察し「本当のこと」を素直に書く。ただし、どんな情報を選択するかにおいて自分の価値観(客観的な)が試される。

今、伝えるべきことは何か?相手の知りたい情報は何か?どんな役割を求められているか?という視点でPRの文章のコンセプトや構成を「手前味噌」な状態から考え直してみるとよい。

就活の自己PRであれば、読む相手はあなたに「将来何をしたいのか?」「自分なりにどんな苦労をしてきたのか?」「自分だけのどんな物語を語ってくれるのか」といったことを聞きたいのだと想像ができれば、自分が「のんびり屋」であることを「推す」ことが最優先ではないと気がつくだろう。

商品リリースも同様だ。商材の「機能・性能」よりも、「どういう不便を解決するために発売するのか?」「どんな苦労が商品化にはあったのか?」「どんな新しい物語を生活に提供してくれるのか」など商品サービスの持つ構想や企画意図を生活者は知りたいのではないか。であれば、そうしたことを中心にリリース(レポート)すべきなのではないか。

いずれにしても相手が知りたいのは「自分なり」「自分にしか」「他の人がやらない」といった意図(思い)であり、これを自分の言葉で表現できるかどうかがポイントになる。

正直さは確かに大切だ。だが、あえて書く必要のないことは書かなくてもよい。PRの文章が「恋愛のためのコミュニケーション(ラブレター)」だとすれば、そのことは納得できる。だが、この書き方までは教えられない。教えるとみんなが同じラブレターを書くことになってしまう。

私の言いたかったことの半分も学生に伝わったかどうか正直なところ自信がない。もっとも、PRでも講義でも「相手に100%の意図は伝えきれない」ということだけは100%確かだ。

「先生!PRの文章はどういう風に書けばいいですか?」という学生からの素朴な質問が、ずいぶんとややこしい話になってしてしまった。

次回は大学の入試広報について書く。