富山県産かまぼこの価値、再発見—蒲友会「かまぼこ大学」

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第4号(2015年8月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

地域に根差す企業とクリエイターがパートナーとなり、新しい価値を生み出した事例を、手がけたクリエイターが自ら解説。今回は、新幹線開通で盛り上がる北陸地方の事例です。

地元の伝統食の新しい切り口を発見する

富山県内の蒲かま鉾ぼこ製造に従事する事業所で働く若手職人たちによる組合「蒲ほう友ゆう会かい」から依頼を受け、長期スパンで取り組んだブランディング活動です。徐々に衰退する業界に新しい風を吹かせるために、富山産かまぼこの存在を、これまでにない切り口から世の中にPR する方法を、クリエイター、かまぼこ職人、料理人たちと共同で考え、展覧会や商品開発を行う「かまぼこ大学」を企画しました。

地元の文化や技術を現代風にアレンジ富山県には、古くから慶祝時に食用のかまぼこでつくった鯛や鶴などを贈る、「細工かまぼこ」という文化があります。北は宮城県から南は長崎、唐津に至るまで、全国各地にはさまざまな種類の細工かまぼこが存在しますが、食べてしまうのがもったいないほど細工が丹念で、造型性に満ちた慶祝用製品が長く地場産業として成り立ってきたのは富山県だけ。色彩豊かにつくられ、味良し・見た目良し、かつては県内のかまぼこ売上の90%を占めていた細工かまぼこですが、近年若者たちの晩婚化や意識の変化から活躍の舞台は少なくなり、同時に県内のかまぼこ業界も勢いが衰えてきています。

そこで、本企画では単にクリエイターたちと斬新なかまぼこ開発を提案するのではなく、フィールドワークと企画会議を重ねて「もう一度愛されるかまぼこ」をメインコンセプトに掲げて、住民たちに訴えかける仕組みづくりからスタートしました。

かまぼこ業者とクリエイターとが協働で開発した新作かまぼこは、地元飲食店のメニューにも登場させた。

手を挙げた4つのかまぼこ業者(富山ねるものコーポレーション・梅かま・新湊かまぼこ・広又蒲鉾)と、5人の若手クリエイター(芸文=富山大学芸術文化学部の学生やプロダクトデザイナー、イラストレーターなど)が約半年間にわたってリサーチを行い、地元の食材や食文化を生かした新作かまぼこを開発。キューブ状の「CUBE」、ゆるキャラ風の「ぼこちゃん」、ゆでると出汁が出る「カマだけうどん」、一口サイズの料理を盛り付ける器として使える「うつわかまぼこ」、お皿の上に飾る「かまぼこシート」、魚の形をしていて、身を食べ切ると骨が残る「魚スティック」、わさび・とうがらし・こしょうの3種類の薬味を仕込んだ「やくみかまぼこ」——これまでにない、多種多様なかまぼこが生み出されました。

富山県高岡市にある芸文ギャラリーで新作かまぼこや、かまぼこに関するさまざまな情報を展示するのに合わせて、地元飲食店では実際のメニューとして登場させました。細工かまぼこから「デザインかまぼこ」へ。現代のライフスタイルにも馴染む、新しいかまぼこの世界を切り拓くことができました。

オリエンをすべて鵜呑みにしない

僕は、クライアントが最初に出したオーダーそのものを、一から一緒に考え直すことから始めます。「◯◯をPRしたいので、チラシをつくりたい」というのは、あくまでもクライアントが考える選択肢の中でのものなので、問題や解決方法を探るうちに、それはチラシでは全く解決しないことが分かったり、PRしたい理由そのものを考え直すほうが、はるかに意義があるということが多いのです。

地方のお仕事は、会社の代表から直接依頼をいただくことが多く、決断までのスピードが速いというメリットがあります。しかしその反面、社長が部下に、部下がパートのおばちゃんにと、デザインの意図やコンセプトが同じ威力で伝わっていくよう、簡潔で明瞭なものにしないと、たとえその場は良く見えたとしても、長続きしません。ですから、どのような仕事でも、できる限り幅広いスタッフを巻き込みながらのプロジェクトになるよう、提案をしています。

羽田 純(はねだ・じゅん)
デザイナー

ギャラリーキュレーターを経て、2015年独立。クリエイティブスタジオ「ROLE/」を立ち上げる。富山ADCグランプリほか受賞多数。

CLIENT VOICE

細工かまぼこなど、富山のかまぼこ屋が持っている技術を、もっといろいろな形(従来にはなかった、今のライフスタイルに合うもの)で活かせる商品開発、また富山という場所で製造するからこそ生まれてくる商品を重視しています。

「こんなかまぼこがあるんだ!」「かまぼこ屋さんって、こんなこともやっているんだ!」「かまぼこに、こんな食べ方があるんだ!」–より多くの世代に蒲鉾を食べてもらうためのきっかけとなる、こうした驚きや関心を引き出す力が、クリエイティブにはあると期待しています。

麻生 大輔(あそう・だいすけ)
富山ねるもの コーポレーション 代表取締役

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