グランプリまで飛ばしてくれた婚約者
彼女は日本人なのですが、中国人とのクウォーターで、日本語も中国語もペラペラなバイリンガルです。わたしよりも7歳ほど若いのですが、わたしが中国・大連市で某日系企業の支社長をやっていたときにも抜群の言語力で多々助けてもらいました。ただ、彼女自身はコトバや文章というものにまったく興味がなく、もちろん本なんて読みません。「小さいころから二つの言語を扱ってきたから、もう言語はたくさん」という考えのようです。
一度だけ、わたしが大好きな村上春樹氏の小説「風の歌を聴け」を彼女がトイレへ持ち込んだことはあるのですが、なぜか中からは爆笑が響いてくる始末。
「そんなに笑うところ、あったっけ」と聞くと、「女の子が裸で『何かした?』って責めるシーン。結局、何もしてなくて、港まで車で送って、女が千円札を挟んで、バイバイっていなくなるときに、ちょうどブリッと……」と、床の上で再び笑いころげるわけです。もはや、よく分かりません。
さて、なんで、こんな話をしているのかといいますと。コトバや文章にまったく関心のない彼女こそが、秋葉原駅の地下通路で「グランプリまで、飛んでいけ。」という第52回宣伝会議賞のスローガンを目にしたわたしのことを、グランプリまで飛ばしてくれた張本人だからなのです。
まあ、それは次回にまたお伝えするとして。2014年の秋に、第52回宣伝会議賞の募集告知ポスターが目に入ったときの衝撃はすさまじいものでした。
わたしはかつて、コピーライターを目指していたことがあります。宣伝会議賞に初めて応募したのは約15年前の大学生のとき。結局は、見事に惨敗しつづけて諦め、就職活動もしないまま、私小説を書きつづけるという日々に堕ちていくことになるのですが……。
それはともかく、宣伝会議賞のポスターを目にした瞬間、その場で動けなくなってしまったのです。今の自分の目の前に立ちはだかっている現実とはまったく異なる未来を信じて目を輝かせる、かつての自分の姿が脳裏をよぎったからでした。
もう一度、あの頃のように熱くなってみたい。そんな気持ちで宣伝会議賞へ作品を応募することに決めたのです。
【田辺さん:9月14日現在、コピー本数0本】
【次回の追憶!】
合田陽太郎さんの9月1日~18日。
「とりあえず宣伝会議は買ってみた」
「チャレンジするためにチャレンジブログ」
「発進!合田陽太郎」
第2回の公開は9月18日(金)。合田さんのロケットスタート、必見です!
「宣伝会議賞の受賞者っぽくない 妙な二人の追憶コラム」バックナンバー
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