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コラム

長谷川、カヤックやめるってよ。

独立するなら、見切り発車がちょうどいい(コピーライター渡辺潤平さん)

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【前回のコラム】「秋山具義がアートディレクターをめざすキッカケは糸井重里」はこちら

2015年12月31日で面白法人カヤックを退職する、株式会社コピーライターを設立した長谷川哲士が、「若手クリエイターが独立するときに大切なこと」を、同業種や異業種の先輩たちにたずねて回る!今、コピーライター、クリエイターとして独立するメリットや難しさとは?

今回のゲストについて

第3回目のゲストは、2007年に独立し「渡辺潤平社」を立ち上げた渡辺潤平さん。まだキャリアも人脈も十分にあるとは言えない若手クリエイターの、ちょっと“見切り発車”な独立。そんな自身の経験に基づいてアドバイスをくれました。


渡辺潤平(わたなべ・じゅんぺい)
コピーライター。渡辺潤平社代表。

1977年生まれ。千葉県船橋市出身。早稲田大学教育学部卒業。2000年博報堂入社(第2MD局、第3制作局、第2CRセンター第5制作室)、2006年博報堂退社 、同年6月よりground LLCへ参加。 同年12月よりフリーランスとして活動開始。2007年に渡辺潤平社を設立。

独立に「失敗」なんてない。

渡辺:長谷川くんとは、「田中電子版」(日本経済新聞社)のときに一緒に仕事をしたんですよね。

長谷川:その仕事の打ち上げのあと、潤平さんがオフィスに招待してくれたんですよね。だから、ここへ来るのは今日で2度目です。そのとき印象的だったのが、オフィスであったかいおしぼりを出してくれたことです。

渡辺:せっかくわざわざ来てくれるので、おもてなしの意味を込めてやっています。それに自分も気持ちがいいし。独立すると、こういうところにもこだわれるのがいいですよね。

長谷川:独立は、博報堂に勤めていたときから考えていたんですか?

渡辺:まったく。博報堂は、入りたくて入った会社だったので。辞めた原因は、いちばんは身体を壊したことですかね。それから、打ち合わせが夜中まで続くことも多かったし、思い通りにものを考えられないことが苦しくて。自分のやり方と根本的に合わなかったんですね。チャンスがあれば外に出て勉強したいなと思うようになりました。

長谷川:その後、当時立ち上げて半年の新しいクリエイティブエージェンシー「ground LLC」に入社するんですよね。

渡辺:そう。でも、参加してみて思ったのは、クリエイティブエージェンシーに行くときは、立ち上げのメンバーじゃないとダメなんだなということでした。立ち上げた人たちが自分たちのためにつくった会社なので、あとから入った自分はどこまでいっても3番手でしかない。ここもやっぱり自分の居場所じゃないかもしれないと思って辞めました。

長谷川:そのとき、辞めたあとどうするか決まっていたんですか?

渡辺:なにも決まっていませんでした。だから、どうしようって。僕、2006年の1年で2回も会社を辞めているんですよ。自分が情けないし、もう広告は嫌だなと思って、2カ月間、何もしなかったんです。家の近くの多摩川の河川敷でぼーっとしたり、1日でやることはお豆腐を買うことだけ、みたいな日々を送っていました。

長谷川:もういちど広告で頑張ろう、と思ったきっかけはあるんですか?

渡辺:親友に誘われて食事に行ったときに、先輩に「ふてくされてないで、ちゃんとしろ」と言ってもらって、「そうだ」と目が覚めました。そのとき、どこか会社を紹介すると言われたのですが、2回も会社を辞めていたので、また辞めることになったら嫌だなと思って。だったらフリーでやってみたいって。とはいえ、当時の自分は29歳。結果が出始めていたとはいえ、みんなが知っているコピーライターというわけでもなかった。でも、やってみてダメだったら広告会社をもう一度受けてみようと思って。

社名は「自分を売る」ためにいちばん良いものを。

長谷川:「渡辺潤平社」という社名はどうやって決めたんですか?

渡辺:この名前だけは最初に決めていて、ほかの候補もありませんでした。これから先、自分を売っていかないといけないので、「渡辺潤平」という名前を覚えてもらわないといけない。それなのに、社名をつけたら自分の名前以外のものに自分の仕事の記憶や価値が蓄積されてしまう。それは損かなと思って。試しに自分の名前に「社」をつけてみたら、あれ、けっこうかわいいなって。音に出してみても「いいじゃん」って。

長谷川:僕の会社の名前は「株式会社コピーライター」なのですが、この社名を考えるときに意識したのは岡本欣也さんの「オカキン」と「渡辺潤平社」でした。雰囲気でつけるんじゃなくて、ちゃんと機能と目的のある名前にしたいなって。

渡辺:「株式会社コピーライター」は、その手があったか!と思いました(笑)。

次ページ 「自分の価値を上げるのは、自分の仕事しかない。」へ続く