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企業理念の達成のためにデジタルを活用する

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顧客を中心に据えて、リアルとネットをシームレスにつなぎ、快適な買い物体験をしてもらうことを目指す「オムニチャネル」。ここ数年、小売業におけるキーワードとなっているが、経営陣や現場との情報共有が課題となり、うまくいかないケースも多い。
今回は、デジタルマーケティング推進における社内情報共有・実践体制について、キタムラ執行役員EC事業部長の逸見光次郎氏と、アイ・エム・ジェイ(IMJ)取締役COOの加藤圭介氏に語ってもらった。

キタムラ EC 新横浜営業部 執行役員EC 事業部長 逸見 光次郎 氏(左)
アイ・エム・ジェイ 取締役COO 加藤圭介 氏(右)

カメラのキタムラ流
オムニチャネル成功のコツ

加藤:小売業においてEC部門と店舗が良好な関係を保つのは難しいこともあります。どのようなことが原因だと思われますか。

逸見:ありがちなのが、EC部門とリアル店舗が、それぞれ売上数値を持ち合ってしまうことです。それでは顧客の奪い合いとなり、協力体制は築けません。ECは全社部門横断で取り組まなければ絶対にうまくいきません。そのためにも、誰もが働きやすいよう、評価を連動させることが大切です。

当社の場合、EC事業部の評価はEC関与売上※です。前期のEC関与売上高は430億円で、その内訳は宅配が119億円で店舗受取が311億円。店舗受取の数字はEC部門の受注目標として共有しています。店舗受取の数字は全部店舗の売上になります。当社は2012年から全店にスタッフ接客用のECタブレットを導入しました。お客さまと一緒にタブレットを見ながら商品選びのアドバイスなどを差し上げ、店頭にない商品でも注文することできます。これによりEC関与売上がアップしたのです。

加藤:売り場におけるオペレーション負荷が増えると、滞ることも多いと感じます。タブレットがこれだけ現場に受け入れられている理由はなんでしょうか。

逸見:理由は単純で、スタッフの手間が軽減されて、売上が上がるからです。タブレットで全ての商品情報をサポートできますし、取り寄せの手間が大幅に簡素化しました。正確な納期がわかるので何度も連絡する手間もかかりません。店舗スタッフやバイヤー、メーカーの担当者、もちろんお客さまも喜んでいます。さらなる活用のため、事業部のメンバーが各地を回り効果的なタブレット活用について研修を行っています。その際には現場の声・希望も集めます。デジタル施策を現場に浸透させるにはメリットを明確にすることが大切です。

加藤:そうですね。店舗のデジタル活用は、現場の負荷軽減や利便性向上の側面から訴求し、それに加えて売上、利益も向上することを語るのが良いですね。そうでないと現場は「手間ばかり増える」と感じてしまうのです。貴社は店舗スタッフのブログも活発です。コンテンツマーケティングを実践なさっていますが、同時に手間もかかります。活用できている理由は何でしょうか。

逸見:ブログは集客のためという目的を説明したうえで、Web販促の担当者が集客に効果的な書き方を説明しています。また、効果が自身で分かるよう、ブログ管理画面を店舗の担当者が確認できるようにしています。現在、投稿数は年間157万件で、約6700万人がそれを見ています。先ほどのタブレットも含め、これらの研修は、本部員が行っています。本部員の多くは店舗経験者なので、現場の商売の感覚がわかっています。だからこそタブレットなどの仕様が現場の人が使いやすい形になるのだと思います。テクノロジーは後から学べるので、商売感覚を重視しています。

加藤:我々は、デジタルマーケティングについてクライアントの社内向け研修を行うことも多いのですが、おっしゃる通りできる限り「現場感覚」を踏まえた上で、専門用語を使わずに話すようにしています。ちなみに、デジタル施策やシステム開発などにおいて、内部と外部の使い分けはどのように行っていますか。

逸見:専門性の高いものはなるべく外部に任せるという方針です。ECのシステムには完成というものはなく、常に8割くらいで走り続け、手直しを繰り返しています。その時、なぜシステムがこのように設計されているか、という「根本にある営業の想い」を理解していないと、方向性が変わってしまいます。したがって、業務設計をしっかり理解して仮説を立て、提案依頼書を書けるSEだけは内製し、その指示を基に外部ベンダーに開発を依頼しています。

次ページ 「ECという「インフラ」で顧客や店舗の利便性を上げる」へ続く