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僕たちの仕事は、どこへ向かうのか?SNS時代のクリエイターの仕事——嶋野裕介×長谷川哲士×福部明浩

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『宣伝会議』11月号の特集テーマは「デジタル化した時代に適合できるか?いま、必要とされるクリエイターの条件」。テクノロジーの発展とデバイスの普及により、顧客と24時間365日つながっている時代に、企業コミュニケーションにおいて求められるクリエイティブとは?また、そのつくり手に期待されるスキルや役割とは?特集内で実施した座談会では、“マスでもデジタルでも”愛されるアイデアを生み出す3人のクリエイターが、「SNS時代のクリエイターに求められる役割・スキルとは?」をテーマに意見を交わしました。
(左から)catch 福部明浩 氏、面白法人カヤック 長谷川 哲士 氏、電通 嶋野裕介 氏。

——皆さんの最近のお仕事を紹介してください。

長谷川:東京メトロ銀座線・丸の内線車内で掲出中の窓上広告を持ってきました。ブランド品買取チェーン「なんぼや」のシリーズ広告です。LINEでブランド品の写真を送ると24時間以内に査定額が返信される「LINE査定」の訴求を目的としたもので、値段が気になるアレコレを写真やテキストで送ると、“ピースフルなコメント”とともに査定額が返ってくるキャンペーンを並行して実施しています。見た人に、その広告をいかに「つぶやいてもらえるか」、そして、それを実際の広告効果につなげていけるかを、常に意識しています。昨年のクリスマス時期に同様のシリーズ広告を展開した際、東京メトロの女性利用客向けのアンケートを行ったところ、2人に1人が「この広告を見たことがある」と回答したそうです。ブランド認知度も、過去に1年間広告を掲出し続けて2%増がやっとだったのが、1~2カ月の掲出で5%増を達成することができました。

長谷川哲士さんが手がけた仕事

全国各地で店舗を展開するブランド買取チェーン「なんぼや」の電車内広告。「なんぼや」の知名度向上を目的に、2014年のクリスマスシーズンに合わせて出稿した同広告で、長谷川さんはTCC新人賞を受賞した。
なんぼやの広告の続編。「芥川賞作家の印税なんぼや?」「新国立競技場なんぼや?」といった広告コピーで、気になるモノの値段のLINEで聞くと手動で返信がくるキャンペーンを訴求する。

福部:広告はスルーされるのが当たり前と言われる中で、すごいですね。

長谷川:今回は広告のコピーだけでなく、LINEの返信文も僕が考えています。一般的なコピーライターの仕事とはちょっと違う、珍しいタイプの仕事と言えるかもしれません。僕はもともとインターネットが主戦場なので、例えばWebサイトで普通は見られない「ソースコード」に仕掛けをしたり、ボディコピーを縦読みすると読める隠しメッセージを潜ませたりと、広告を見た人に“ツッコませる”ポイントをつくることには、こだわっています。

嶋野:僕が最近手がけた「フリー素材アイドル」も、従来型の広告業務とは少し異なる仕事でした。ミッションは、双子のアイドル「MIKA☆RIKA」の知名度を予算ゼロ円で向上させること。クラウドファンディングで資金を集め、MIKA☆RIKAを起用したフリー素材を1000点以上つくり、配布しました。日本の企業全体の9割以上を占める中小企業は、広告を出稿したくてもできない企業がほとんど。そこでMIKA☆RIKAの素材を使ってもらうことで、露出を増やし、認知度を高めていこうという戦略でした。ヤフーニュースをはじめWebメディアで取り上げられて話題化したことに加え、実際に100社以上の企業や病院に素材を活用してもらっています。この施策が上手くいった要因の一つは、「フリー素材アイドル」という名前だと思っていて、その点、“言葉が効いた”仕事だったとも言えるかもしれません。

嶋野裕介さんが手がけた仕事

スカパー!のテレビCM「全力でお願いしてみた」篇。黒スーツに身を包んだイケメンサラリーマン90人が「一度でいいからスカパー!を観てほしい」という思いを込めて全力でお願いするという内容。
新人アイドル MIKA☆RIKAの知名度向上を目的に展開したキャンペーン「フリー素材アイドル」。なかなか広告を出稿することができない中小規模の企業向けに、無料で使えるアイドル写真素材を1000枚以上公開した。

福部:ネーミングの勝利ですね。

嶋野:ありがとうございます。「タダで使えます」ではなく、言の葉に乗って広がりやすいような言葉をと考えました。「広がりやすさ」を念頭に置くという点では、映像のつくり方も変わりつつあるなと感じています。「スカパー!オンデマンド」の新テレビCMは、スーツ姿のサラリーマン90人が「スカパー!オンデマンドを観てください!」とひたすらお願いするという内容です。タイトルは、YouTubeで動画をシェアしてもらうために重要な要素ですので、YouTube上を賑わす「やってみた」動画に倣い、見た人が「お願い」を真似してみたくなるようにと考え、「全力でお願いしてみた」篇と名付けました。動画の紹介文では、1600字の規定字数一杯に「お願いします!」を入力し、必死さを表現しています。

長谷川:これ、すごく面白いですね!

嶋野:映像を見るだけで終わらないよう、YouTube版では関連サイトにリンクするアノテーションバナーを使った演出も加えました。再生中に「お願いを聞いてあげる」というバナーが表示され、動画が進むにつれてどんどんサイズが大きくなっていくんです。こうしたYouTubeならではの演出のためには、撮影時から工夫が必要とされることも多い。今回は、バナーの表示スペースを確保するために、画面上方をわざと空けて撮影しました。また、当社のPRスタッフが撮影に同席。撮影中、トータルで何回「お願い」したかカウントしておくよう言われ、実際に数えた2万9006回という数値が、後にプレスリリースのタイトルや文面に使われました。こうした“ジャブ”を打ち続ける仕事は、面倒だけれど、今の時代に必要なことなのではと思っています。

福部:話題が広がっていく経路はよく分からないけれど、動画のタイトルが重要というのは…

続きは、宣伝会議2015年11月号『僕たちの仕事は、どこへ向かうのか?」 SNS時代のクリエイターの仕事』


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