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読売オンライン・R25・SmartNews……激論!歴史の証言者たちが語る、ネットニュース20年史

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R25がネットに完全移行したワケ

中川:今日は、10月1日にWeb版に完全移行した『R25』の副編集長の鶴見香奈子さんにも来ていただきました。2004年に『R25』が生まれた背景には、若者の新聞離れがありましたよね。

鶴見:私たちも、一次情報の重要性は世の中にもっと浸透すべきだと思っています。新聞社が日々届けている情報は、私たちが生きる上で欠かせないものだと思うんです。とはいえ、新聞の一面を読んでもその情報を噛み砕けない読者はたくさんいる。R25はそんな人たちに向けて、世の中のニュースを要約して伝えるために生まれました。

中川:R25がフリーマガジンからWebに完全移行、という決断はネットニュース界隈の人もかなり注目していると思うんですよ。紙とWebを両立させる難しさはどんなところでしたか?

鶴見:創刊当初から紙のアーカイブサイトのようなものも存在しています。ただ、私たちも紙で発行することを想定して台割をつくり、構成を考えていますから、ネットに出すとどうしても一記事一記事が孤立してしまい、紙の中では存在したはずのストーリーがなくなってしまうんです。これにはライターからも不満の声が上がっていました。

嶋:紙は一つのパッケージとして情報を売ることができるけど、ネットに出した時点でそれがすべてスライスされてしまいますからね。ヤフトピだって、トップページを見ただけではどこが配信したニュースかも分からないし。

中川:そのニュースが新聞社発か、週刊誌発かで見る人の印象も変わるだろうしね。まぁ、でも人が一度で視認できるのが13.5文字(ヤフトピのタイトルの文字数)なら仕方ないか。

嶋:今日はスマートニュースの川崎裕一さんにも来ていただいているので、ちょっと話がそれちゃうけど、質問してもいいですか?川崎さん、SmartNewsはタイトルの下にメディア名を表記するようにしていますよね。これは何か意図があるんですか?

川崎:そうですね。SmartNewsも、今では記事を提供してくださるメディアの数がかなり増えているんですが、やっぱり媒体によってカラーというものがあるじゃないですか。同じネタでも、まったく色味の異なる記事になる。その差異は、クリックする前に読者に明確にしてあげないといけないと思っているんです。

松井:それは新聞社にとってはありがたいですよね。私たちも一記事一記事に「読売新聞」というブランドをのせて世の中に出している、という意識が強いので。

嶋:たしかに。記事を提供しているメディアからすれば、クレジットは出してほしいですよね。で、R25に話を戻しますけど、そもそもどうしてWebに完全移行しようと思ったんですか?

鶴見:まず創刊した当時と今とでは大きく環境が異なります。例えば、2004年ごろは地下鉄内の電波状況も万全ではなかったので、通勤するサラリーマンは携帯電話で情報を得ることが当たり前ではなかった。だから紙のメディアを読むしかなかったんです。けれども、今は地下鉄に乗っていても問題なくスマホが使える。ユーザーの可処分時間を考えたとき、スマホに入り込んでいく必要があったんです。

一同:なるほど~!

中川:でも、これまではフリーマガジンの広告料を運営資金にしてきたわけですよね。それがいきなり、PV至上主義のネットに移行すると、マネタイズ上でのジレンマもありますよね。

鶴見:そうですね。地下鉄に電波が入るようになったという環境の変化もネット移行の大きな要因のひとつですが、より強力な理由としてネットニュースのマネタイズの概念を変えるチャレンジがしたかったんです。ネット上にはフローの情報はたくさんありますが、現状雑誌で作っていたようなストック情報が非常に少ない。そこで、R25が時間が経っても読める情報をウェブに出していくことで、そうしてネット上に特集化されたストック情報に対してタイアップ広告を出してもらうという、新しいパッケージを作れないかと考えているんです。

嶋:それって、すごくリクルートらしい発想ですよね。でもその英断は、ぜひ成功させてほしい。これまではネットメディアのマネタイズといえば、PVに応じてバナー換金されるのがスタンダードでした。それにありつけない人たちがステマに走って、今、それらを健全化する動きが出ているわけですよね。
でも、従来のPVを換金する手法やネイティブアドだけでは、多分ですけど、一次取材をするコストは捻出できない。だから、R25が挑戦するような新しいマネタイズの手法を考えていかなければならない。特に、新聞社のサイトの記事の価値は高いわけで、ネットでのマネタイズの新しい方法を考えることは、広告会社もクライアントも含めて課題ですよ。そういう時期なんじゃないですか。今は。

次ページ 「SmartNewsはコンテンツに愛がある」へ続く


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