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コラム

『編集会議』の裏側

若手編集者たちが“編集2.0”を考える ~『編集会議』番外編~【前編】

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編集2.0のキーワードは“コミュニティ”!?

――これからの編集を考える上で、“コミュニティ”は一つのテーマになりそうです。

佐藤:『編集会議』のなかで、コルクの佐渡島庸平さんも“コミュニティ”をキーワードに挙げていましたね。

稲着:メディアがコミュニティを持つという発想自体は決して新しいことではなく、むしろ先進的なのは出版社なんじゃないでしょうか。これまでも女性誌が読者をコミュニティ化してイベントを行うなどはしていました。その他、企業がソーシャルアカウントを運用して数万人のファンとつながるといったことも5、6年前からすでに言われていることですよね。ただ、「コミュニティを編集する」という考え方は今後ますます重要になってくると思います。いまは個々人が発信する情報が届きやすく、かつ大きくなっているので、コミュニティを持ったとして、それをどうまとめるのかが問われます。たとえば、尖っている声があるとして、まとめようと調整をしすぎれば尖りがなくなってしまう。でも尖っている声ほど魅力的だったりするわけで、その声を生かしながら一つのコミュニティを仕立てていくという、それ自体が編集であるからこそ、コミュニティと編集はセットで語られやすいのだと思います。

朽木:とくにネット上にコミュニティをつくって編集する、さらにそこでマネタイズをしようという概念は、これまであまりなかったですよね。

稲着:そうなんです。先ほどの文脈で言うと、人の集まる場所に、特定の目的とアーカイブ性を足せば、あらゆるものがコンテンツ化します。コンテンツになるということはお金になることを意味するので、そこにコミュニティ“ビジネス”の可能性はあるのかなと。「Synapse」でも、著名な方が自分のタレント力を切り売りするような既存のコンテンツとは違う売り方をさせていただいているものが多数あります。たとえば、サッカー元日本代表監督の岡田武史さんのサロンでは、岡田さんが現在オーナーをしているFC今治を共に盛り上げようという趣旨で、収益金の一部をプロジェクト資金にする形で理念共感型のコミュニティを展開しています。その過程のすべてがコンテンツですからね。

佐藤:現在はFacebookをプラットフォームとして使っていますが、独自のプラットフォームを開発されているんですよね。たとえば、これまでのコミュニティの熱量や盛り上がりといったものを数値化して編集することもできるんですか?

稲着:サロンの形態にもよるので難しいところでもありますが、今後は熱量を計測するアルゴリズムみたいなものを組んで、編集に生かしていければと考えています。

朽木:熱量をどうコントロールするかを考えるのは、編集をするうえで大事ですよね。その熱量を指標にも取り入れられることができれば、あらゆるメディアにも生かせますし。

佐藤:今後のメディアは、マスを狙うかニッチを狙うかだと思うんです。マスメディアであれば、読者やユーザーの顔が見えないし、同時にどのくらい届いているのかというのが数字で見ることができたとしても、実感としてはわかりづらいですよね。ニッチであれば、顔が見え、直接コミュニケーションできる関係性が重要になるのかなと思います。

稲着:マネタイズという点からも、「Synapse」は“ニッチでもマネタイズ可能”というところは考えています。実際に「Synapse」を通じた収入が年間1000万を超える方も複数いらっしゃいます。また尖った情報を発信したいけど炎上は嫌だという人も、セミクローズドなコミュニティであれば尖り続けながらマネタイズもできます。成功例としては、スタートアップ界隈をテーマにしたメディアをされている梅木雄平さんという方で、開設当初は月額1000円で30人でしたが、現在は月額4000円で500人近く集めています。梅木さんはサロンの運営が本当にうまくて、自分のメディアにも情報を出しながら、その情報をサロンの中で参加者と共により深めていくということをしています。コンテンツの生成過程そのものをマネタイズしてしまうという、「Synapse」の特性を生かしたサロン運営をしている方ですね。

朽木:佐藤さんは、オンラインサロンやらないんですか?

佐藤:イケダハヤトさんなどからも勧められていますが、なかなか一歩が踏み出せないです。海外メディア動向を追うブログ「メディアの輪郭」をやっていますが、それもずっとやっていくかどうかはわからないですし…。

朽木:えっ、そうなんですか!?

佐藤:ずっと興味が続くかわからないですし、いつか突然やめてしまうかもしれないです(笑)。


「最適化・効率化重視の時代だからこそ求められるコンテンツ」など、後編は10月28日(水)公開予定です。


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『編集会議』2015年秋号
9月16日発売 定価1300円
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特集「新時代に求められる“編集2.0”」
「良いものをつくれば売れる(読まれる)」という時代が終わり、読者・ユーザーに「どう届けるか」という“コミュニケーションを編集する力”が問われるなか、編集にはどのようなアップデートが求められているのか。編集を再定義しようとする考え方や取り組みを通じて、これからの編集のあり方について考える。

・KADOKAWA×宝島社×LINE「新時代の編集者の採用基準」
・オンラインサロンに見る、体験をサービスとして設計する編集力
・若手編集者が語る1.0→2.0の間

特集「コンテンツマーケティングを生かすオウンドメディア戦略」
—100社に聞く オウンドメディア運用の実態
—あのオウンドメディアの“中の人"の運用術 他

特集「本の最前線はいま 書店会議」
—出版界の勢力関係を解き明かす 出版界カオスマップ

連載「書く仕事で生きていく」
—スポーツライター 木崎伸也「本田圭佑の取材秘話」他


佐藤慶一(さとう・けいいち)
編集者。1990年生まれ。新潟県佐渡島出身。学生時代にNPO法人グリーンズが運営するウェブマガジン「greenz.jp」のライターインターンやコンテンツマーケティングを手がけるメディア企業での編集アルバイト経験を経て、講談社「現代ビジネス」エディター。ブログ「メディアの輪郭」を運営。2015年7月、現代ビジネス×サイボウズ式によるブランデッドメディア「ぼくらのメディアはどこにある?」を立ち上げた。

稲着達也(いなぎ・たつや)
早稲田大学政治経済学部出身、シナプス株式会社COO兼プロデューサー。Synapseリリース後、兼務でドワンゴにて新規事業開発、統合サービスデザインに従事し、2015年シナプスに本格復帰。これまでにファッションショーイベントや討論イベントのプロデュース、ストリーミング番組企画、Webキャンペーンや書籍出版等、媒体問わず様々なコンテンツの企画・編集に携わり、現職。

朽木誠一郎(くちき・せいいちろう)
編集プロダクション・ノオト所属の記者、編集者。大学時代にフリーライターとしてキャリアをスタートし、卒業後は2014年4月にメディア事業をおこなう会社に新卒入社。同年9月より編集長として企画・編集・執筆を担当し、2015年8月に退任。現在は品川経済新聞記者などのほか、Yahoo!ニュース個人などで執筆、PAKUTASOのフリー素材モデルとしても活動している。