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BOVA審査員座談会「僕たちはこんな動画を待っている!」

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日本発のオンライン動画をもっと面白くするには

編集部:前回の審査会では、再生回数を目的に海外受けを狙った日本っぽい動画を作るのはどうなのか?本来のターゲットが置き去りにされていないか?という指摘もありました。

澤本:オンライン動画でちょっと気になっているのが、PV数至上主義なんです。

普段の仕事でクライアントと話していても思うんですが、評価の明確な基準となるものが、とりあえずPV数しかない。そうすると、国内だけでは数が稼げないから、海外でも見てもらえる映像を意識して、キャッチーな日本の伝統的なモチーフを使ったりする。となると、再生回数は回っているけれど、実は日本国内ではあまり視聴されていない、という動画も少なくないと思うんです。

佐々木:海外でビューを稼いで、日本で逆輸入的にバズらせるというのは、一つの手法になっていますよね。

澤本:そうして一時的に話題になったところで、本来商品のターゲットである日本の市場の人たちがファンになってくれたかどうかは、怪しいと思うんですよ。

木村:確かに。とは言え、真逆なことを言うようなんですが、国境を超えるというのも、オンライン動画のロマンの一つだと僕は思っています。

これまで日本のメディアは、言葉の壁もあって、なかなか海を渡れなかったじゃないですか。でも今では、海外の人にも当たり前のように「あの動画見たよ」って言ってもらえる。それって結構すごいことだと思うんですよ。老若男女、世界中の人みんなが共感できるような動画というのも、一つの理想の姿じゃないかと思います。

澤本:日本でもちゃんとファンをつくって、そのうえで国境を越えていくのはいいと思うんです。例えば2012年のロンドン五輪の時に展開されたP&Gのグローバルキャンペーン「Thank You, Mom」のように、普遍的なグローバルインサイトがきちんと扱えていて海外でも見られたなら、素晴らしいですよね。

川村:僕、そういう逆輸入という視点が今まで全然なかったんですが、今の話に一つつけ加えるなら、海外で流行らせるって、そうは言っても大変なことです。逆輸入を狙っても実現するのはそんな簡単なことじゃないと思う。バズればいいという方向性に行き過ぎるのは、確かに危険ですけど。

僕は自分で制作するときは、下ネタ、犬猫、赤ちゃん、は禁じ手にしています。そのモチーフは、みんな大好きで、モチーフだけで見られるとわかっているから。

佐々木:僕ら審査員としては、いわゆる“ゲイシャ、フジヤマ”みたいなジャポネスクを安易に利用する作品は求めないということですね。

もちろん海外で拡散するのは悪いことではないから、日本らしさを求めるのも間違ってはいないと思います。でも、日本らしさってそれだけじゃない。「日本人はここまでやるのか」と思わせるような、細やかなクラフトだって日本らしさになりえると思います。

澤本:日本らしいコンテンツという意味では、80年代のバラエティ番組が外国人に見せるとすごく人気があるんですよね。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のいくつかのコーナーとか。なぜかというと、当時はいまのように表現にリミットがなかったから、かなり際どい表現で笑いを取りに行っているんです。

いまはテレビ局の考査が厳しくなっているから、テレビではできないCM表現も、オンライン動画ならいまでも実現の余地がたくさんあるはずだと思うんですよ。オンラインには言い訳がないから。そういう意味で、テレビCMにできない面白い表現が出てくることを期待したいですね。

佐々木:ゆくゆくは、テレビ業界で言う放送作家や脚本家のような、新しい職能の人たちが動画の世界にも現れてくるかもしれない。そういう「動画プランナー」のような人たちに価値を与えていくことも必要になってきますよね。

僕もBOVAでは、あくまでもオンラインという場において、既存のテレビCMとは違う感覚で勝負している作品を推したいです。

木村:繰り返しになりますが、強制視聴の賞ではなく、能動視聴の賞であることは強調したい。能動的に見てもらうには、単によくできた映像なだけでは足りず、流行らせる力が必要です。

川村:そしてあくまでも「ファンになってもらうための動画」という前提を忘れずに。どんな作品が集まるか、楽しみですね。

BOVA審査員 齋藤精一さん、谷川英司さんからもコメントいただきました

審査員・齋藤精一さんコメント

——テレビCMとオンライン動画の棲み分けは今後どう進むと思いますか?

動画は何よりも人にものを伝える手段として優れていると思います。アイデアを紙=企画書にするだけではなく、映像化することで伝達力が高くなると思うので、さまざまな手法や手段を使って、いろんな機会に積極的に映像を作っていくことが今後絶対に必要ですし、それがクリエイティブ全体のレベルを上げていくと思います。

オンラインならではの凄みは、インタラクティブにできることだと思います。リニアな映像表現だけではなく、映像畑の人もテクノロジーを勉強することで、表現の可能性を広げられると思います。

——日本のオンライン動画の強みを挙げるとしたら?

日本の広告には時間を圧縮する文化があります。CMも15秒が主流ですし。ストーリーを短い時間でどうやって伝えるかをしっかりと先人の事例もふくめ学ぶと、よいヒントになるのではないでしょうか。

さいとう・せいいち
ライゾマティクス 代表取締役/クリエイティブディレクター/テクニカルディレクター

審査員・谷川英司さんコメント

——テレビCMとオンライン動画の棲み分けは今後どう進むと思いますか?

元々は予算も時間もない代わりに期待もなく、現場の担当レベルでも完成できる自由度の高さに面白さがあったと思われます。ただ、まだ今でも動作環境の進化と共に、オンライン動画は新しい表現を生みやすいタイミングがあったり、実験の場としての側面があり続けていて、それが魅力です。

またメディア費がかからないアドバンテージを生かし、企業姿勢や企業の本質を丁寧に伝える手段としても、オンライン動画が成長していけば、非常に有効だと思います。

——日本のオンライン動画の強みを挙げるとしたら?

ユニクロのブログパーツ「Uniqlock」など、日本は以前から新しいメディアや動作環境や技術の進化に対応するアイデアを、クオリティとスピードを持って即座に開発することには長けています。ただ近年、海外賞の審査員しか響いていないものや、ただ装いがそれっぽい、ただ長いだけのものも多い。企業や商品の持つ空気を正しく背負った、日本のマーケットにも届くものである必要が出ていると思います。

たにがわ・えいじ
TOKYO ディレクター/プランナー


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川村真司(かわむら・まさし)
PARTY クリエイティブディレクター。

1979年生まれ。博報堂、180Amsterdam、BBH NewYork、ワイデン+ケネディ NYを経て、2011年PARTY設立。トヨタ自動車やグーグルのグローバルキャンペーンを手がけつつ、SOUR、androp、ユニコーンなどのMV制作、プロダクト制作など多岐に渡って活躍。2012年Fast Company誌「100 most creativepeople in business」に選ばれた。

 

木村健太郎(きむら・けんたろう)
博報堂ケトル 代表取締役共同CEO/エグゼクティブ クリエイティブディレクター。

1969年生まれ。1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、PR、デジタルを越境した統合的なプランニングスタイルを確立し、2006年博報堂ケトルを設立。これまで100を超える内外の広告賞を受賞。2014年カンヌチタニウム&インテグレート部門など審査員経験も多く、3年連続でカンヌライオンズ公式スピーカーをするなど海外講演も多数こなしている。

 

澤本嘉光(さわもと・よしみつ)
電通 クリエーティブディレクター/CMプランナー。

1966年生まれ。主な仕事にソフトバンクモバイル「ホワイト家族」シリーズ、トヨタ自動車「ReBORN ドラえもん」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」・「家族の絆」、家庭教師のトライ「ハイジ」シリーズなど。クリエイター・オブ・ザ・イヤー、TCC賞2014グランプリなど受賞。東京FM「澤本・権八のすぐにおわりますから」(土曜深夜25時より放映)のパーソナリティー。

 

佐々木康晴(ささき・やすはる)
電通 専任局長/エグゼクティブ・クリエーティブディレクター。

1971年生まれ。電通入社後、コピーライター、インタラクティブ・ディレクターを経て、2011年からニューヨークに出向。帰国後の現在も、Dentsu Aegis NetworkのExecutive Creative Directorを兼任している。国際広告賞の審査員経験や国際カンファレンスでの講演も多数。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト受賞。

BOVA事務局からのお知らせ

1. 協賛企業による課題オリエンの様子が公開されました

10月に開催された課題オリエンの模様を動画で公開しました。BOVAのサイトからご覧いただけます。作品制作のヒントにぜひご活用ください。

2. BOVAとアドフェストが提携!BOVA受賞でアドフェストにエントリーされます

このたび、アドフェスト(アジア太平洋広告祭)との提携が決まりました。BOVAから、海外広告賞の受賞のチャンスが広がります。

概要:

1. 一般公募部門のグランプリ、準グランプリ、審査員特別賞を受賞した作品が、ヤングディレクターの「ポートフォリオ」カテゴリーにエントリーされます(条件:ディレクターが過去制作した作品が7作品以内の場合)。
2. 9000バーツ(約3万円)のエントリー料をBOVA事務局で負担します。
3. エントリーシートの英訳は、BOVA事務局で代行します。

学生もヤングディレクターにはエントリー可能です。

多数のご応募お待ちしております!