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なぜ日本企業の「デジタル・シフト」は壁にぶつかるのか?<デジタル・シフトVol.1>

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デジタル世界でコア・コンピタンスを再現する

私はこのサブスクリプションコマースの2つのモデルに企業にとってのECチャネル、さらにはデジタル活用の大きなヒントが潜んでいると考えています。

購入の手間を省くことを価値とした前者のモデルと、キュレーション機能を付加価値とした後者のモデル、どちらを選ぶべきか…。選択に際しては、その商品や企業に対して消費者が何を求めているのか、つまりはコア・コンピタンスを理解できていなければ選べないからです。

あくまでECという販売チャネル、販売時点に限定した話をしましたが企業がデジタル・シフト」するとは、購買時点に限らず、その企業が提供しうる価値の本質を見極め、それをデジタル上でも再現していくことにその本質があります。

現在、日本企業のデジタル施策がうまくいっていないのは、「とりあえずEC」、「とりあえずオムニチャネル」と新しく登場した手法に目が行ってしまい、コア・コンピタンスをオンラインで再現するために必要な手法の選定という視座が欠けているからではないでしょうか。

製造業でも同様です。例えばクリス・アンダーソンが自書で提唱した「MAKERS」の概念は「モノを作ることが、自社が提供できる価値の本質」と考えてきた製造業の人たちにとっては、センセーショナルに受け止められたのではないでしょうか。テクノロジーが浸透した時代、消費者は「作られたものを買うだけ」の存在から、自らもモノを作る側にも参加することができるようになっている。

消費者が「デジタル・シフト」した時代、企業は「家電メーカー」や「アパレル小売り」といった自らを規定していた業態、社会における存在意義に縛られていると、真に消費者が求める価値を提供できないまま、時代から取り残されてしまいかねません。

消費者の視点に立って、戦略を描く

消費者がデジタル・シフトした時代、最大の変化は企業と消費者の情報の非対称性が崩れたことにあります。そこでは自社の優位性、社会に対する存在意義など、コア・コンピタンスそのものを見直さないと、自分たちが価値だと思っていたものが、ある日、消費者にとっては何の価値もないものになっている可能性もあります。

その意味で、デジタルテクノロジーへの理解を深める前段階で、現在の環境において、企業には改めて自社のコア・コンピタンスを見直す必要がありますし、その過程があって初めて自社にとって必要なテクノロジーが何か、取捨選択できるようにもなるのです。

【次回】
「なぜ、いま企業に「顧客」と「データ」という言葉の再定義が求められるのか?<デジタル・シフトVol.2>」
こちら

田島 学 氏(たじま・まなぶ)
アンダーワークス 代表取締役社長

早稲田大学政治経済学部卒。南カリフォルニア大学留学。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて大手企業Web CRM戦略立案、Webを利用したロジスティックス改善プロジェクト、ダイレクトチャネル戦略立案等に従事。セキュリティ認証事業ベンチャーの立ち上げを経て、アクセンチュアとソフトバンクのジョイントベンチャーであるイーエントリーにて、海外IT企業の日本市場進出コンサルティングを行う。2004年よりコンサルタントとして独立、多くのWebサイト調査分析/戦略立案/構築プロジェクトに参画。2006年4月、アンダーワークスを創業。